粗利率を上げる方法で悩む経営者へ|売上を伸ばす判断基準を税理士が解説
粗利率を上げたい売上はあるのに残らない社長へ!値決め・原価・商品構成から粗利改善策を判断できるように解説
粗利率は、売上を追うより先に上げるべきである。理由はひとつ。売上がいくら伸びても、粗利率が低ければ会社にお金は残らないからです。対象は「注文はあるのに、なぜか通帳が増えない」と感じている社長。値上げ、原価の見直し、商品構成の入れ替え。この三つのどれから手をつけるかで結果は変わります。今より単価を上げたら客が逃げるのでは。原価を削ったら品質が落ちるのでは。そもそもうちの粗利率って高いのか低いのか。そんな迷いを、判断できる基準に変えていきます。読み終える頃には、自社の粗利率をどこから動かすべきか、順番が見えているはずです。
この記事のポイント
- 粗利率は「値決め・原価・商品構成」の三つで動く。売上を増やすより、この順で見直すほうが早く効くことが多い。
- 1%の粗利率改善が、利益を大きく変える。売上1億円なら粗利率1%で100万円。多くの中小企業の営業利益率が数%という現実を思えば、無視できない差です。
- まず自社の粗利率を「知る」ことから。数字を把握していない会社ほど、値決めも原価も感覚で決めてしまっている。
この記事の結論
- 粗利率が低い会社は、売上より先に「残る率」を上げる
- 手をつける順番は、原則として値決め→商品構成→原価
- 値上げは「全品一律」ではなく、商品ごとに強弱をつける
- 原価は仕入だけでなく、値引き・廃棄・作り直しも原価と考える
- 粗利率は毎月見る。年一回の決算では手遅れになりやすい
なぜ売上はあるのに、粗利が残らないのか
正直なところ、粗利率の話をすると「うちは薄利多売だから」と最初から諦めている社長が少なくありません。でも、薄利は業種の宿命ではなく、値決めと構成の結果であることが多いのです。
売上より先に見るべき数字
売上は「会社の元気」を表す数字に見えますが、実際に生活を支えるのは粗利です。粗利とは、売上から売上原価を引いた金額。粗利率はそれを売上で割ったもの。たとえば売上3,000万円で粗利1,200万円なら、粗利率は40%です。ここから人件費や家賃などの固定費を払って、残ったものが利益になります。つまり粗利率が低いと、どれだけ売っても固定費に飲み込まれる。岐阜市内で飲食店を営むある社長は、月商が前年より80万円伸びたのに「なぜか楽にならない」と言っていました。中身を見ると、伸びたのは原価率の高いドリンクの食べ放題プランばかり。売上は増え、粗利率は下がっていた。よくあるのが、この「売れているのに苦しい」状態です。
値決めを「なんとなく」で決めていないか
実は、粗利率が低い会社の多くは、値段を「原価の何割乗せ」や「周りと同じくらい」で決めています。ある製造業の社長は、10年前に決めた加工単価をほぼ据え置いたまま、材料費と電気代の高騰をかぶり続けていました。試算すると、主力製品の粗利率は当初の32%から19%まで落ちていた。本人は「値上げしたら取引を切られる」と怖がっていましたが、実際に主要3社へ相談したところ、断ったのは1社だけ。残り2社は「むしろ今までよく我慢してくれた」という反応でした。値決めは、思っているほど動かせないものではない。ケースによりますが、長く据え置いている単価ほど、見直しの余地は大きいものです。
判断基準:どこから手をつけるべきか
三つのレバーのうち、どれを最初に動かすか。判断の目安はこうです。第一に、値決めを3年以上見直していないなら、まず値決めから。効果が出るのが最も早いからです。第二に、売れ筋と粗利の高い商品がズレているなら、商品構成から。第三に、値上げも構成も整っているのに苦しいなら、原価に踏み込む。順番を逆にして、いきなり原価削減から入ると、品質を落として客離れを招くことがある。まずは「削る」より「決め直す」。これが遠回りに見えて近道です。もう一つの目安として、粗利率を毎月把握できているかどうか。数字を見ていない状態で値決めや原価に手を入れても、効果があったのか分からず続きません。まず「測る」、次に「動かす」。この順序だけは崩さないほうがいい。
三つのレバーで粗利率を動かす
粗利率を上げる方法は、突き詰めれば三つしかありません。売値を上げる、原価を下げる、構成を変える。ひとつずつ、現場感を持って見ていきます。
値決め:一律ではなく強弱をつける
値上げというと「全品10%アップ」のように一律で考えがちですが、これは失敗しやすいやり方です。おすすめは、商品を三つに分けること。他店と比べられやすい「看板商品」は据え置くか小幅に、比較されにくい「サイド商品」や付随サービスは思い切って上げる。先ほどの飲食店では、メインの定食は50円だけ上げ、ドリンクとトッピングを100〜150円上げました。客数はほとんど変わらず、客単価は約7%上昇。粗利率は約4ポイント改善しています。人は「全部が高くなった」には敏感でも、一部の値上げには驚くほど反応が鈍い。最初は半信半疑だった社長も、翌月の試算表を見て「怖がりすぎていた」と苦笑いしていました。
原価:仕入だけが原価ではない
原価を下げると聞くと、仕入先を叩くことを思い浮かべる人が多い。でも、隠れた原価はもっと身近にあります。値引き、廃棄、作り直し、過剰なサービス。これらはすべて粗利を削ります。ある小売店では、月末の売れ残りを大幅値引きで処分するのが習慣になっていました。年間で計算すると、値引き総額は粗利の1割近く。発注量を1割絞り、値引き販売を減らしただけで、粗利率は2ポイント以上戻りました。仕入価格は1円も変わっていません。原価は「買うとき」だけでなく「捨てるとき・まけるとき」にも発生している。そこに目を向けると、削れる場所は意外と多いのです。もう一つ見落とされがちなのが、無償のやり直しや過剰なサービス。良かれと思って付けているおまけが、積み上がると粗利を静かに削っていることがあります。ただし、原価削減はやりすぎると現場が疲れ、品質やお客様の満足が落ちる。どこまで削るかは、粗利率という数字と、現場の空気の両方を見て決める。ここはケースによりますが、削って良い原価と、守るべきコストの線引きが何より大切です。
商品構成:粗利の高い商品を前に出す
同じ売上でも、何が売れるかで粗利率は変わります。粗利率50%の商品が多く売れる月と、粗利率20%の商品ばかりの月では、残るお金がまるで違う。ですから、粗利率の高い商品を「売りやすく」する工夫が効きます。メニューの一番上に置く、セットの中心に据える、店員が最初にすすめる。逆に、手間ばかりかかって粗利の薄い商品は、思い切ってやめる選択もあります。先ほどの製造業の社長は、赤字すれすれだった小口の特注品を段階的に断り、粗利率の高い定番品へ生産を寄せました。売上は約1割減りましたが、粗利額は逆に増えている。忙しさは減り、残業も減った。「売上が落ちたのに、初めて心に余裕ができた」とこぼしていたのが、妙に印象に残っています。帝国データバンクなどの調査でも、原材料高で多くの中小企業が採算悪化を訴えている一方、価格転嫁や商品の絞り込みに動いた企業ほど収益を守れている傾向がうかがえます。全部を売ろうとしない。これも立派な戦略です。
よくある質問
Q1. 粗利率は何%あれば安心ですか
業種によって大きく違います。飲食は60〜70%、小売は20〜40%、製造や卸は20〜40%が一つの目安です。他社比較より、自社の去年より上がっているかを見るほうが実用的です。
Q2. 値上げで客が減るのが怖いです
一律ではなく、比較されにくい商品から少しずつ上げるのが基本です。客単価が5%上がって客数が3%減っても、粗利額はむしろ増えるケースが多い。全品一斉より影響は小さく済みます。
Q3. 原価を下げると品質が落ちませんか
仕入を叩く発想だと落ちます。まず狙うのは値引き・廃棄・作り直しといった「ムダな原価」です。ここは削っても品質に響かず、粗利だけが戻ります。
Q4. 売上を増やすのと、どちらが先ですか
原則は粗利率が先です。粗利率20%の会社が売上を2倍にしても、粗利率50%の会社が売上を8割増やすほうが残るお金は上、ということが普通に起きます。器を直してから水を入れる順番です。
Q5. どの数字を毎月見ればいいですか
売上・粗利額・粗利率の三つで十分です。前月比と前年同月比を並べるだけで、値上げや構成変更の効果がはっきり見えます。年一回の決算では、気づいた時には手遅れになりがちです。
Q6. 小さな会社でも商品別に粗利を出せますか
出せます。主力の上位5〜10商品だけでも構いません。全部を厳密に計算しようとすると続かないので、まずは売上の8割を占める商品から始めるのが現実的です。
Q7. 値上げのタイミングはいつがいいですか
年度替わり、原材料の値上がり時、新商品の投入時が伝えやすい時期です。理由を添えて事前に知らせるほど、取引先の納得は得やすくなります。黙って上げるのが一番もめます。
Q8. 自社の粗利率が高いか低いか分かりません
まず決算書の売上総利益を売上で割ってみてください。それが粗利率です。同業の一般的な水準と、自社の3年前の数字、両方と比べると位置がつかめます。判断に迷えば専門家に見てもらうのが早道です。
最後に整理しておきたいこと
- 粗利率は「値決め・原価・商品構成」で動く。売上より先に見直す
- 手をつける順番は、原則として値決め→商品構成→原価
- 値上げは一律にせず、比較されにくい商品から強弱をつける
- 原価は仕入だけでなく、値引き・廃棄・作り直しにも潜んでいる
- 粗利率は毎月見る。1%の改善が利益を大きく変える
粗利率は、いきなり全部を変えようとすると手が止まります。まずは主力商品の粗利率を一つ計算してみる。それだけで、次に動かすべきレバーが見えてきます。売上を追う前に、残る率を上げる。岐阜で会社を続けていくために、今月の試算表を開くところから始めてみてください。
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このテーマは、判断の切り口ごとに考え方が分かれます
以下では、代表的な視点を整理しています。
- 経営計画の作り方を知りたい方へ →「経営計画 作り方とは何か」
- 数字の見方を深めたい方へ →「売上改善とは何か」
- 資金面から考えたい方へ →「資金繰り改善とは何か」
- 人材面から見直したい方へ →「人材育成とは何か」
- 承継まで見据えたい方へ →「事業継承とは何か」
- 健全な税務を理解したい方へ →「税務とは何か」
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