管理職の育て方で悩む経営者へ|組織が変わる改善策を税理士が解説
管理職の育て方で悩むプレイヤー気質の社長へ!任せられる管理職を育てる関わり方を判断できるように解説
管理職は「任せて、待って、振り返る」の順番で育ちます。教え込むのではなく、判断させて、経験させる。これが遠回りに見えて一番の近道です。正直なところ、プレイヤーとして優秀だった社長ほど育成でつまずきます。自分でやったほうが速いから、つい手を出す。だから部下が判断する機会を失い、いつまでも「指示待ち」が残る。「任せたいのに任せられない」「一度任せて失敗されるのが怖い」「そもそも誰を管理職にすればいいのか分からない」。そんな迷いを抱えたまま現場に戻っていませんか。この記事では、任せられる管理職を育てるために社長がどう関わればいいのか、その判断基準と手順を整理します。読み終える頃には、明日から何を手放し、何を残すかが見えてくるはずです。
この記事のポイント
- 管理職が育たない原因の多くは社長側にある。能力不足ではなく、判断の機会を奪っているケースが目立ちます。
- 育成は「仕事を任せる」ことから始まる。研修や役職を与えるより、権限と失敗の許容範囲をセットで渡すほうが効きます。
- 数字を共有できる管理職ほど早く育つ。感覚ではなく数字で判断する習慣が、経営者目線を養います。
この記事の結論
- 管理職はプレイヤーの延長ではなく、別の役割として育てる
- いきなり全権委任ではなく、小さな判断から段階的に任せる
- 失敗の許容範囲を先に決めておくと、社長も部下も動きやすい
- 月次の数字を一緒に見る場をつくると、育成と経営が同時に進む
- 「口を出さずに見守る時間」を意図的に確保する
なぜ管理職が育たないのか、原因は多くが社長の側にある
実は、管理職が育たない会社の相談を受けると、部下の能力よりも先に社長の関わり方に原因が見つかることが多いのです。厳しい言い方ですが、育てているつもりで芽を摘んでいる。ここを直視しないと、何人採用しても同じことが繰り返されます。
プレイヤー気質の社長が陥る「奪ってしまう」構造
岐阜市のある建設業の社長は、現場をよく知る叩き上げの方でした。部下が見積もりを持ってくると、その場で全部直してしまう。赤字で直す箇所は一枚あたり十カ所を超えることもあったそうです。本人は「教えている」つもりです。でも、直された側は次も自分で考えず、社長の赤ペンを待つようになる。三年経っても課長が一人前にならないと嘆いていましたが、判断の機会を毎回取り上げていたのは社長自身でした。よくあるのが、この「善意の横取り」です。速く正しくやれる人ほど、待てない。手を出すたびに、部下の「考える筋肉」が少しずつ弱っていく。そう考えると、我慢もまた仕事の一つだと分かってきます。
役職を与えれば育つ、という誤解
肩書きだけ先に渡して、あとは本人任せ。これもうまくいきません。名古屋との取引が多い岐阜の製造業で、優秀な職人をいきなり工場長にしたケースがありました。ところが、部下の勤怠管理や原価の話になると手が止まる。現場の腕は一流でも、五人の部下の段取りを組むのは初めての経験だったのです。プレイヤーの能力と、人と数字を動かす能力は別物だからです。ここを分けて考えないと、優秀な職人を一人失い、管理職も一人失う、という二重の損をしかねません。中小企業庁の調査でも、中小企業の人材育成の課題として「育成の時間が取れない」「指導する側のノウハウ不足」が上位に挙がる傾向があります。役職は出発点であって、ゴールではありません。
判断基準:その部下に「任せられているか」を測る三つの問い
誰を管理職にするか迷ったら、次の三つで見てください。一つ、社長がいない日でも現場が回るか。二つ、自分の担当だけでなく、周りの人の動きに目が向いているか。三つ、うまくいかなかったとき、言い訳ではなく次の一手を口にできるか。この三つのうち二つ当てはまれば、任せる価値はあります。全部そろうのを待っていたら、いつまでも候補は現れません。ケースによりますが、七割できていれば任せてみる、くらいの温度感がちょうどいい。
任せられる管理職を育てる、社長の具体的な関わり方
ここからが本題です。育成はセンスや根性の話ではなく、手順の話。順番を守れば、数字が苦手な社長でも管理職は育てられます。
小さな判断から段階的に渡す
いきなり「あとは任せた」は失敗のもとです。最初は五万円までの発注は本人判断でよい、といった形で、金額や範囲を区切って渡します。慣れてきたら十万円、三十万円と上げていく。金額という物差しがあると、社長も部下も「どこまで自分で決めていいか」が一目で分かります。先ほどの建設業の社長には、まず「見積もりの最終確認だけ社長、作成と一次判断は課長」と役割を分けてもらいました。最初の一カ月は、社長の手元に修正したい見積もりが山積みになったそうです。それでも口を出すのを週一回の確認までこらえてもらった。すると半年ほどで、課長が自分で客先と交渉して案件をまとめてくるようになった。社長は「口を出したくてうずうずした」と笑っていましたが、その我慢が育成そのものでした。任せる範囲を数字で区切る。この一手間が、あいまいな「任せた」を実行可能な指示に変えます。
失敗の許容範囲を先に決めておく
任せるのが怖いのは、どこまで失敗していいか決めていないからです。会社が傾くような失敗は避けねばなりません。でも、数万円の判断ミスや、一度のクレーム対応の不手際は、月謝のようなものです。あらかじめ「この範囲までの失敗は勉強代」と社長の中で線を引いておく。そうすると、部下が失敗しても感情的に叱らずに済み、本人も萎縮せずに次へ進めます。最初は半信半疑だった社長ほど、この線引きで気持ちが楽になったと言います。
数字を一緒に見る場を、月に一度つくる
管理職を育てる一番の教材は、実は月次の数字です。売上だけでなく、粗利、人件費、部門ごとの利益。これを月に一度、三十分でいいので管理職と一緒に見る。最初は用語も分からず黙っている人が多い。それでも三カ月続けると、「今月は材料費が上がっていますね」と自分から口にし始めます。半年経つと、「この部門の人件費率が去年より三ポイント高い」といった具体的な指摘まで出てくる。数字で語れる管理職は、経営者に近い目線を持ちます。売上を追うだけの人から、利益で考える人へと変わっていくのです。この変化は派手ではありません。会議での一言が少し鋭くなる、その程度です。でも、その小さな変化の積み重ねが、任せられる管理職をつくります。私たちが顧問先で月次決算をおすすめするのは、税務のためだけでなく、こうした人が育つ土壌になるからです。日本政策金融公庫の調査などでも、業績の良い企業ほど数字の共有が現場まで及んでいる傾向がうかがえます。
よくある質問
Q1. 管理職が育つまで、どのくらいの期間がかかりますか?
一般的には、小さな判断を任せ始めてから一人前になるまで一年から三年が目安です。半年で見違える人もいれば、三年かかる人もいます。焦らず、任せる範囲を少しずつ広げるのが結局は近道です。
Q2. 育てたい人がいません。外から採用すべきですか?
社内にいないと感じても、判断力の芽を持つ人は隠れていることが多いです。まず一つ小さな権限を渡して反応を見てください。それでも難しければ採用も選択肢ですが、外部人材も定着まで一年前後はかかると考えておくべきです。
Q3. 任せたら品質が落ちました。戻すべきでしょうか?
すぐ全部を取り戻すのは避けたいところです。落ちた原因を一緒に振り返り、判断の基準を言葉にして渡し直します。一度の失敗で権限を没収すると、本人は二度と挑戦しなくなります。
Q4. プレイヤーとして優秀な人を管理職にして失敗しました。なぜですか?
自分で成果を出す力と、人に成果を出させる力は別物だからです。数字管理や部下指導は新しいスキルなので、最初の半年は伴走が要ります。本人の資質ではなく、渡し方の問題であることが多いです。
Q5. 管理職研修に出せば育ちますか?
研修だけで育つケースはまれです。学んだことを現場で使う機会がなければ定着しません。研修は一割、残り九割は実務での経験と振り返りだと考えてください。費用対効果は「戻ってから何を任せるか」で決まります。
Q6. 社長が口出しをやめられません。どうすれば?
報告のタイミングを決めるのが有効です。都度口を出すのではなく、週一回の報告の場でまとめて確認する。それ以外は見守ると決めるだけで、介入は大きく減ります。最初はもどかしいですが、二カ月で慣れます。
Q7. 給与や評価はどう変えればいいですか?
役割が変わったら、責任に見合う処遇を用意すべきです。プレイヤー時代と同じ給与のまま責任だけ増えると、不満が離職につながります。金額の目安は会社の利益状況によりますが、責任と報酬の釣り合いは必ず点検してください。
Q8. 育成にかけた費用や手間は経費になりますか?
研修費や書籍代は原則として経費計上できます。人件費の一部を育成時間に充てる場合の考え方も含め、扱いはケースにより異なります。判断に迷う支出は、記帳前に税理士へ確認するのが確実です。
最後に整理しておきたいこと
- 管理職が育たない原因は、部下より社長の関わり方にあることが多い
- 役職を与えるだけでは育たない。権限と失敗の許容範囲をセットで渡す
- いきなり全権委任せず、金額や範囲を区切って段階的に任せる
- 月に一度、数字を一緒に見る場が経営者目線を育てる
- 口を出したい気持ちを我慢する時間こそが、育成の中身になる
管理職は、社長が手放した分だけ育ちます。今日、部下に任せられる小さな判断が一つはあるはずです。まずはそれを一つ手放してみてください。岐阜で会社を続けていくうえで、社長一人の限界が会社の限界になってしまうのはもったいない。数字の見せ方や任せ方に迷ったら、一人で抱え込まず、早めに相談の場を持つことをおすすめします。
経営の悩みを、一人で抱え込まないでください
岐阜の藤垣会計事務所にご相談ください
会社の数字・資金繰り・経営計画・事業承継・相続まで、社長の不安は一つひとつ違います。
経営計画を考える前提として、企業成長・資金繰り・人材・承継まで含めた背景知識を整理したい方は、先にこちらもご覧ください。
このテーマは、判断の切り口ごとに考え方が分かれます
以下では、代表的な視点を整理しています。
- 経営計画の作り方を知りたい方へ →「経営計画 作り方とは何か」
- 数字の見方を深めたい方へ →「売上改善とは何か」
- 資金面から考えたい方へ →「資金繰り改善とは何か」
- 人材面から見直したい方へ →「人材育成とは何か」
- 承継まで見据えたい方へ →「事業継承とは何か」
- 健全な税務を理解したい方へ →「税務とは何か」
同じテーマ「人材育成」の最近の記事
- 給与体系の作り方で迷う経営者へ|組織が変わる改善策を税理士が解説
- パート・アルバイトの戦力化で悩む経営者へ|組織が変わる改善策を税理士が解説
- 中小企業の賃上げの進め方で悩む経営者へ|組織が変わる改善策を税理士が解説
藤垣会計事務所
〒500-8367 岐阜県岐阜市宇佐南2丁目5-5
TEL:058-215-1030
メールでお問い合わせ:https://fujigaki-tax.com/contact