相続税の対象か分からず準備に迷う家族経営者へ|相続税は資産内容で変わるため「早めの試算」が重要

相続税は「遺産総額がいくらから」ではなく、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えた部分にだけかかるため、自社株や不動産を含めた“今の総額”を早めに試算することが重要です。 正直なところ、「うちはそんなに資産はない」と感じている家族経営者ほど、自社株評価を含めた試算をしていなかったり、配偶者控除や事業承継税制などの制度を知らないまま漠然と不安を抱えていたりするケースがよくあります。

【この記事のポイント】今日のおさらい:要点3つ

  • 相続税がかかるかどうかの第一関門は「基礎控除額」で、計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。この金額以下なら、原則として相続税はかかりません。
  • 実は、家族経営者の場合、「自宅+預金」だけでなく「自社株」「事業用不動産」「退職金・死亡退職金」などを合わせると、基礎控除額を超えるケースも多く、ざっくり試算を早めにやるかどうかで、準備できる期間と選択肢が大きく変わります。
  • こういう人は今すぐ試算すべきです:法定相続人が2〜3人いて、自宅(ローン完済)+事業用の土地建物+自社株+預金を合計すると「たぶん5,000万〜1億くらいかな」と感じているが、一度も専門家と相続税のシミュレーションをしたことがない家族経営者。

この記事の結論

  • 一言で言うと「相続税がかかるかどうかは、“3,000万円+600万円×法定相続人”を超えるかどうかと、自社株や不動産を含めた総額次第だから、早めのざっくり試算で“自分の家は対象かどうか”をはっきりさせるべき」です。
  • 最も重要なのは、「自宅・預金」だけでなく、「自社株」「事業用資産」「生命保険・退職金」を含めた相続財産の総額を把握し、基礎控除額と配偶者控除・事業承継税制などを踏まえて、“今のまま何もしなくても大丈夫か、対策が必要か”を数字で判断することです。
  • 失敗しないためには、「うちはそんなに資産がない」「税金が怖いから見たくない」と思って先延ばしにせず、相続発生の10年前くらいから、相続税の有無と大まかな額を一度シミュレーションし、必要に応じて生前贈与・自社株対策・事業承継税制の活用などを検討することです。

通帳と住宅ローン完済の書類を見て、「相続税 いくらから」と検索してしまう夜

検索履歴には「相続税 いくらから」が並び、計算式だけが頭に残る

家族が寝静まった夜、リビングのテーブルに決算書と通帳、住宅ローン完済の書類を広げる。 「ここまでやってきたし、家族には迷惑をかけたくないな」と思いながらも、相続税のことを考えると、胸のあたりがじんわりざわつく。

スマホを取り出し、検索窓に打ち込む。

「相続税 いくらから」 「相続税 基礎控除 計算」

すぐに、「3,000万円+600万円×法定相続人」という計算式が目に飛び込んでくる。 法定相続人が妻と子ども2人なら、3人。基礎控除は4,800万円か──と指折り計算してみる。

「自宅が今いくらくらいで、自社株はどれくらいの評価なんだろう」 「預金と生命保険を足したら、どのくらいになるんだろう」

正直なところ、計算の途中で怖くなってしまい、電卓を置いてしまいたくなる瞬間がある。 よくあるのが、「ざっくり計算してみたけれど、自社株のところで手が止まる」というパターンです。

実体験①:「うちは関係ない」と思い込んでいて、実はギリギリ対象だった社長

以前、お付き合いのある小さな製造業の社長と、こんな会話がありました。

社長「実は、最近相続税の話があちこちから聞こえてきて。“うちはそんなに資産はないから大丈夫だろう”と思ってたんですが……」

一緒にざっくり試算してみることになりました。

  • 自宅(評価額の目安):3,000万円
  • 預金・有価証券:2,000万円
  • 自社株(税理士が簡易評価した金額):2,500万円

合計すると7,500万円。 法定相続人が配偶者と子ども2人なら、基礎控除は4,800万円です。

ざっくり計算でも、「課税対象になりうるライン」に乗っていることが分かりました。

社長は、「正直なところ、こんなにあるとは思っていませんでした。自社株なんて、売ろうと思っても売れないものなのに」と苦笑い。 この瞬間、「怖くて目をそらしていた数字」を、初めて具体的に見たわけです。

実体験②:逆に、思っていたより対象外に近く、ホッとしたケース

別の家族経営の会社では、社長がこんな不安を口にしていました。

社長「実は、相続税で家を取られるんじゃないかと、ずっと心配で」

同じようにざっくり試算してみると、

  • 自宅(持ち家だが、路線価を使うと街の相場よりやや低め)
  • 預金・金融資産はそれほど多くない
  • 自社株評価も、会社規模や業績からそれほど高くはない

といった状況で、合計額は基礎控除の範囲内に収まる可能性が高いという結果になりました。

もちろん、正式な評価と申告が必要な段階では税理士の精緻な計算が欠かせません。 それでも、社長は、「実は、何年も“相続税が大変なことになるんじゃないか”と勝手に想像していました。ざっくりでも数字で確認できて、肩の力が抜けました」と話していました。

このケースは、「怖さの正体が分からないから、想像だけが膨らんでいく」典型でした。 早めの試算は、「対策が必要かどうか」だけでなく、「必要ないなら安心して今の事業に集中できる」という意味でも価値があると感じます。

相続税が「いくらから」かかるのかを判断する3つのステップ

ステップ①:基礎控除額を計算する(3,000万円+600万円×法定相続人)

まず、相続税のかかる・かからないを判断する出発点が「基礎控除額」です。 国税庁や財務省、各種金融機関の解説は、次の式を共通して使っています。

相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例:

  • 相続人が配偶者と子ども2人(法定相続人3人)の場合 → 基礎控除額は 3,000万円+600万円×3=4,800万円
  • 相続人が配偶者と子ども1人(2人)の場合 → 基礎控除額は 3,000万円+600万円×2=4,200万円

この基礎控除額を「相続税の入り口ライン」として、自分の家庭の場合の金額を一度出してみることが大切です。

さらに、配偶者には「配偶者の税額軽減」という制度があり、配偶者が取得した遺産が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分」のいずれか多い金額までは、相続税がかかりません。

つまり、配偶者が生きている一次相続では、多くのケースで配偶者分の相続税はゼロになりうるということです。

ステップ②:相続財産の総額を“ざっくり”出す(自社株・不動産を含めて)

次に、「そもそも相続財産の総額が基礎控除額を超えそうかどうか」をざっくり把握します。 政府広報や銀行のコラムでも、以下のようなステップでの確認が推奨されています。

  1. 対象となる財産の洗い出し
    • 現金・預金
    • 株式・投資信託などの金融資産
    • 自宅・事業用不動産・土地
    • 自社株(非上場株式)
    • 生命保険金(一定額までは非課税)
    • 退職金・死亡退職金
  2. 債務・葬式費用の確認
    • 借入金
    • 未払の医療費など
    • 葬儀関連費用
  3. 「相続財産の総額=資産合計−負債」のイメージをつかむ

この段階では、路線価や不動産鑑定などの精密な評価までは行わず、固定資産税評価証明書や近隣の相場、税理士の簡易評価などを使って「ざっくりいくらくらいか」を見る形で十分です。

家族経営者の場合、ここでポイントになるのが「自社株」です。 中小企業の自社株は、オーナーが考える以上に高い評価になる場合が多く、相続税負担や納税資金の問題を引き起こすリスクが指摘されています。

ステップ③:「今のまま放置した場合」の相続税をシミュレーションする

最後に、「何も対策をしなかった場合に、相続税がどれくらいになりそうか」を一度シミュレーションしてみます。

国税庁の解説によると、相続税の計算はざっくり次の流れです。

  1. 相続財産の価額の合計(純資産価額)を出す
  2. 前7年以内の一定の贈与も加算し、課税価格の合計額を算出
  3. 課税価格から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を算出
  4. 各相続人が法定相続分を取得したと仮定して、各人の取得額に税率をかけて相続税の総額を計算(税率は10〜55%の超過累進)

もちろん、詳細な計算は税理士の仕事です。 ただ、銀行や税理士事務所のコラムでは、「相続税が発生するかどうか、発生するとしたら数百万円か、数千万円か」といったオーダー感を知ることが、家族経営者にとって大きな意味を持つと説明されています。

実は、この“ざっくりシミュレーション”をやるかどうかで、

  • 生前贈与を計画的に進めるか
  • 自社株評価を引き下げる対策をするか
  • 事業承継税制を使うか
  • 生命保険や退職金で納税資金を準備するか

といった選択肢の検討が、10年単位で変わってきます。

家族経営者がやりがちな「相続税の誤解」と失敗パターン

誤解①:「3,600万円以下なら相続税はかからない」で止まってしまう

相続税専門のサイトなどでは、「相続財産が3,600万円以下であれば相続税はかからない」といった表現をよく見かけます。

これは、法定相続人が1人の場合の基礎控除額(3,000万円+600万円=3,600万円)を指したものですが、家族経営者の多くは配偶者+子どもがいるため、実際の基礎控除額はもっと大きくなります。

よくあるのが、「3,600万円ライン」の話だけを聞いて、「うちはそれ以上あるから大変だ」と早合点したり、逆に「そこまではないから大丈夫だ」と安心してしまったりするパターンです。 実際には、「自分の家庭の法定相続人の数」で計算し直す必要があります。

誤解②:「配偶者控除があるから、一次相続は気にしなくていい」

配偶者には、「1億6,000万円」または「法定相続分」のいずれか多い金額まで相続税がかからないという強力な控除があります。

このため、「配偶者に大半を相続させれば、一次相続の相続税はゼロで済む」という話を耳にすることも多いでしょう。

ただし、その後に配偶者が亡くなったとき(二次相続)に、その分の資産が丸ごと次世代に移ることになります。 一次相続で配偶者に集中させすぎると、二次相続の基礎控除は減り(相続人が子どもだけになるため)、結果としてトータルの相続税が増えるケースもあります。

事業承継を見据えたコラムでも、「一次相続と二次相続を通算したシミュレーションを行うこと」が重要だと繰り返し指摘されています。

誤解③:「自社株以外の資産だけ見ればいい」と考えてしまう

家族経営者の中には、「自宅と預金だけなら基礎控除の範囲内だから大丈夫だろう」と考え、自社株や事業用不動産を計算から抜かしてしまう人もいます。

しかし、相続税のルールでは、「原則として、被相続人が亡くなった時点で所有していた全ての財産」が相続税の対象です。 中小企業の自社株式は、オーナーが想像する以上に高い評価になる場合があり、「自社株相続で会社が資金難に陥るリスク」が指摘されています。

よくあるのが、「会社の評価」が頭に入っていないまま、個人の財産だけで判断してしまうことです。 事業承継の観点でも、「自社株評価の試算」と「相続税のシミュレーション」はセットで行う必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続税は、遺産がいくらからかかりますか?

A1. 原則として、「相続財産の総額」が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えた場合に、相続税が発生する可能性があります。

Q2. 基礎控除額は今後も同じですか?

A2. 現在の基礎控除額は2015年の改正で引き下げられた水準(3,000万円+600万円×法定相続人)です。 将来に制度変更の可能性はありますが、現時点ではこの計算式が基準です。

Q3. 配偶者には相続税がかからないのですか?

A3. 配偶者の取得した遺産が「1億6,000万円」または「法定相続分」のいずれか多い額までは、相続税がかかりません。 ただし、二次相続のことも考えた分割・対策が必要です。

Q4. 自社株の評価はどう計算されますか?

A4. 類似業種比準価額方式・純資産価額方式など、国税庁の定めるルールに従って評価されます。 中小企業オーナーは、自社株評価が相続税を大きく左右する点に注意が必要です。

Q5. 事業承継税制を使えば、相続税対策は不要ですか?

A5. 事業承継税制を用いると、自社株にかかる相続税・贈与税の納税が猶予・免除される場合がありますが、適用要件や継続条件も多く、自社株評価対策と併用するのが一般的です。

Q6. 相続税のシミュレーションは、いつやるべきですか?

A6. 相続の10年前くらいから、一度ざっくり試算しておくと、対策に使える時間と選択肢が大きく広がります。 特に家族経営者は、自社株評価が膨らむ前にチェックしておくことが重要です。

Q7. どこに相談すればいいですか?

A7. 相続税・事業承継に詳しい税理士のほか、金融機関の相続相談窓口や公的機関の事業承継相談窓口があります。 「自社株評価と相続税の両方を見てくれるか」を確認すると安心です。

まとめ

  • 相続税が「いくらから」かかるかは、単純な金額ではなく、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額を超えるかどうかで決まり、家族経営者の場合は自宅・預金だけでなく自社株や事業用資産も含めた総額で判断する必要があります。
  • よくあるのが、「うちはそんなに資産がない」「配偶者控除があるから大丈夫」と思い込み、基礎控除の計算と相続財産の総額を一度も整理しないまま時間だけ過ぎてしまうパターンですが、早めのざっくり試算によって、相続税がかかるかどうか・かかるならどの程度かを把握し、生前贈与・自社株対策・事業承継税制・生命保険などの選択肢を冷静に検討できるようになります。
  • 迷っているなら、まずは「法定相続人の数から基礎控除額を計算する」「自宅・預金・自社株などの資産をざっくりリストアップする」の二つだけでも紙に書き出し、そのメモを持って相続・事業承継に強い専門家に一度相談してみるのがおすすめです。

ここ最近、「相続税 いくらから」「自社株 相続 負担」と何度も検索しているなら──それは、“不安を頭の中でぐるぐるさせる段階”から、“数字で現状を確認し、具体的な準備に進む段階”に移っていいサインです。 最初の一歩として、「うちの基礎控除額はいくらか」と「ざっくりの相続財産総額はいくらか」を今日どこかの紙に書き出してみませんか。

藤垣会計事務所