在庫を減らして資金をつくる方法で不安な時は?資金繰りを守る判断基準を解説
在庫が資金を圧迫して不安な社長へ!過剰在庫を見抜き手元資金に変える進め方を判断できるように解説
在庫は減らせば資金に変わる。まず結論です。過剰な在庫は、形を変えて眠っているお金にすぎません。売れ残った棚卸資産を現金に戻せば、新たな借入に頼らず手元資金は増えます。理由はシンプルです。仕入れに払ったお金が、売れるまで商品として棚に固定されているからです。対象は、決算書では利益が出ているのに、なぜか口座にお金が残らない社長。「棚に商品はあるのに現金が薄い」「返済のたびに資金が削られる」「でも何から減らせばいいのか分からない」。そんな心の声に、この記事は在庫回転率の見方と、過剰在庫の見抜き方、そして在庫を無理なく資金に変える進め方で答えます。どこから手をつけ、どこで止めるのか。その判断基準まで持ち帰ってください。
この記事のポイント
- 在庫は資産ではなく「凍ったお金」。100万円分の在庫は、100万円の現金が棚で眠っている状態と同じです。
- 過剰在庫は在庫回転率で数字で見抜ける。感覚ではなく、回転日数と滞留期間で判断します。
- 減らし方には順番がある。仕分け→現金化→発注の仕組み直しの順で進めれば、無理なく資金に変わります。
この記事の結論
- 在庫回転率=売上原価÷平均在庫。回転日数が業界平均の1.5倍を超えたら要注意。
- 1年動いていない在庫は「資産」ではなく処分候補。抱え続けるほど価値も資金も減る。
- まずは全在庫の2割を占めがちな「死に筋」から現金化する。
- 減らして終わりではなく、発注ルールを変えて再発を防ぐまでが一連の流れ。
- 損切りの痛みは一度きり。抱え続ける資金流出は毎月続く。
過剰在庫はなぜ資金を苦しめるのか
正直なところ、在庫の多さを「豊かさ」だと感じている社長は少なくありません。棚が埋まっていると安心する。その気持ちはよく分かります。でも資金繰りの視点から見ると、話は逆になります。
在庫は「使えないお金」に姿を変えている
在庫は貸借対照表では資産の欄に並びます。ところが資金繰りの現場では、売れるまで一円も動かせません。いわば凍ったお金です。80万円で仕入れた商品が棚にあるということは、80万円の現金がその棚に姿を変えて眠っている、ということ。仕入れ代金は先に出ていき、回収は売れてから。この時間差が、利益は出ているのに現金が足りないという状態を生みます。しかも在庫には、仕入れ代金の固定だけでなく、保管する倉庫の家賃、管理の手間、年月とともに落ちる商品価値、火災保険や棚卸の労力といった見えないコストがつきまといます。持っているだけで、静かにお金が漏れ続けているのです。中小企業庁の調査でも、黒字なのに資金繰りに苦しむ企業は一定割合で存在し、その原因の一つが在庫や売掛金への資金の固定化だと指摘されています。利益と現金は別物、という感覚をまず持つことが出発点です。
在庫回転率で自社の状態を数字でつかむ
過剰かどうかは、感覚では判断できません。数字で見ます。使うのは在庫回転率です。計算式は、年間の売上原価÷平均在庫金額。たとえば年間の売上原価が6,000万円、平均在庫が1,000万円なら、回転率は6回です。これを日数に直すと、365÷6でおよそ61日。つまり仕入れた商品が現金に戻るまで平均61日かかっている、と読めます。もし平均在庫が2,000万円に膨らんでいれば回転率は3回、回転日数は約122日。同じ売上でも、倍の期間お金が棚で眠っている計算になります。まずは自社の直近3年分を出してみてください。回転率が年々下がっているなら、在庫にお金が沈みつつあるサインです。
【判断基準】過剰在庫を見抜く4つのサイン
読者が自分で見極められるよう、他社でも使える公平な基準を挙げます。次のうち二つ以上当てはまれば、過剰在庫を疑ってよい水準です。第一に、在庫回転日数が同業の平均のおおむね1.5倍を超えている。第二に、1年以上まったく動いていない品目がある。第三に、在庫金額が月商を上回っている(業種によりますが、小売や製造で月商の1〜2か月分を超えると重い傾向)。第四に、棚卸のたびに「これ、いつ仕入れたっけ」という品が出てくる。よくあるのが、四つ目を軽く見てしまうことです。記憶にない在庫は、たいてい売れる見込みのない在庫です。
在庫を無理なく資金に変える進め方
見抜いたら、次は減らす番です。ただし一気に投げ売りするのは危険です。順番を守れば、痛みを抑えながら資金を取り戻せます。
まず「動いていない在庫」を仕分けする
岐阜市で金属部品の卸をしている社長から、こんな相談を受けたことがあります。「借入は増えるのに、なぜか楽にならない」。決算書を一緒に見ると、利益は毎年出ている。ところが在庫が3,000万円まで膨らんでいました。そこで全品目を、直近1年で動いた在庫・半年止まっている在庫・1年以上動かない在庫の三つに分けてもらいました。すると、金額にして約600万円分が1年以上まったく動いていない死に筋だと分かった。社長は最初、半信半疑でした。「いつか売れるかもしれない」と。ため息をつきながら棚を見て回り、それでも一つずつ札を貼っていきました。多くの会社で、こうした滞留在庫は全体の2割前後を占めます。まずはこの2割を見える化することが、資金化の第一歩です。
値引き・処分の損切りをどう考えるか
ここで多くの社長が立ち止まります。「値引きしたら損が出る」「仕入れ値を割るのは悔しい」。その気持ちは自然です。ただ、判断の物差しを変える必要があります。すでに払った仕入れ代金は、売っても捨てても戻りません。考えるべきは、これから先どちらが得か。抱え続ければ、保管費・管理の手間・場所という見えないコストが毎月かかり続けます。ケースによりますが、原価の3割引きでも今月現金化できるなら、1年後にゼロで処分するより会社は楽になります。損切りの痛みは一度きり。抱え続ける資金流出は毎月続く。この差を紙に書いて比べると、判断が軽くなる社長は多いです。先の金属部品の会社は、死に筋の一部を協力会社へまとめて引き取ってもらい、約200万円を現金に戻しました。派手な話ではありません。ただ、社長がぽつりと「机の前に座っても、資金の心配が一つ減った」と漏らした。その表情が印象に残っています。
発注と仕入れの仕組みを変えて再発を防ぐ
実は、在庫は減らして終わりではありません。仕組みを変えなければ、また同じだけ積み上がります。もう一つの事例です。ある飲食向けの食材業者では、「安いから」とまとめ買いする習慣が過剰在庫の原因でした。そこで、動きの速い品と遅い品を分け、遅い品は発注ロットを半分に落とし、月に一度、回転日数を確認する場を設けました。半年後、在庫回転日数はおよそ90日から60日へ縮まり、金額にしておよそ400万円分の資金が棚から手元へ戻ってきました。ポイントは、値引きより発注の入口を絞ること。出口を急ぐより、入口をゆるやかに締めるほうが、現場の抵抗も少なく続きます。発注の担当者にとっても「欠品させたくない」という不安は根強いものです。だからこそ、勘に頼るのではなく、直近の販売数から必要量を逆算する簡単なルールを一枚の紙で共有しておくと、現場は安心して発注を絞れます。数字が苦手でも、月次の在庫金額をメモするだけで十分に効きます。大切なのは、減らすことそのものより、増えすぎない状態を保ち続ける仕組みを会社に残すことです。
よくある質問
Q1. 在庫回転率はどのくらいを目指せばいい?
業種で大きく異なります。回転が速い飲食や小売なら年12回以上、部品や機械などは数回のことも。まずは自社の過去3年と比べ、下がっていないかを見るのが実践的です。
Q2. 過剰在庫かどうかの目安は?
在庫金額が月商を超えている、または回転日数が同業平均の1.5倍を超えると重い傾向です。加えて1年以上動かない品があれば、金額にかかわらず処分候補と考えます。
Q3. 値引きして売ると赤字では?
会計上は損が出て見えます。ただ仕入れ代金はすでに払い済みで戻りません。抱える保管費と機会損失を含めれば、原価の3割引きでも現金化したほうが得な場面は多いです。
Q4. どの在庫から手をつければいい?
1年以上動いていない死に筋からです。多くの会社で全体の約2割を占めます。ここを現金化するだけで、資金繰りの体感は大きく変わります。
Q5. 在庫を減らすと売り逃しが怖い
動きの速い主力は減らさず、遅い品だけ発注ロットを落とすのが基本です。全体を一律に絞るのではなく、品目を分けて考えれば売り逃しは防げます。
Q6. 在庫を減らすと決算や税金にどう影響する?
在庫が減れば売上原価が増え、その分だけ利益は圧縮されます。結果として一時的に納税額が下がる場合もありますが、目的は節税ではなく資金化です。順番を取り違えないことが大切です。
Q7. 数字が苦手でも管理できる?
できます。難しい計算より、月末の在庫金額を毎月メモするだけで傾向はつかめます。増え続けていれば黄色信号。まずは記録する習慣から始めれば十分です。
Q8. 相談するならどの段階がいい?
在庫が月商を超えたと感じた時点です。決算前に慌てて動くより、期中に手を打つほうが選択肢が多く残ります。早いほど痛みの少ない現金化ができます。
最後に整理しておきたいこと
- 在庫は資産の顔をした「凍ったお金」。減らせば手元資金に戻る。
- 過剰かどうかは在庫回転率と回転日数で数字で見抜く。
- 1年動かない死に筋(多くは全体の約2割)から現金化する。
- 損切りの痛みは一度、抱える流出は毎月。物差しを未来で考える。
- 減らした後は発注の入口を絞り、再発を防ぐところまでを一連の流れにする。
在庫は、迷っている間にも価値と資金を少しずつ失っていきます。「いつか売れる」と抱え続けているものが一つでもあるなら、今月の棚卸で、動かない在庫に印をつけるところから始めてみてください。全部を一度に片づける必要はありません。まず2割。そこから会社の呼吸は、確実に楽になります。
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このテーマは、判断の切り口ごとに考え方が分かれます
以下では、代表的な視点を整理しています。
- 経営計画の作り方を知りたい方へ →「経営計画 作り方とは何か」
- 数字の見方を深めたい方へ →「売上改善とは何か」
- 資金面から考えたい方へ →「資金繰り改善とは何か」
- 人材面から見直したい方へ →「人材育成とは何か」
- 承継まで見据えたい方へ →「事業継承とは何か」
- 健全な税務を理解したい方へ →「税務とは何か」
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