決算前の節税は何をするかで迷う経営者へ|会社に資金を残す判断基準
決算前の節税は、税金を減らすためではなく、会社に資金と信用を残すために選ぶべきである
決算直前の節税は「使う節税」ではなく「残す節税」を優先すべきです。理由は単純で、税金を1円減らすために現金を10万円出せば、手元は確実に痩せるから。黒字が見えてきた今、まず考えるのは利益を消すことではありません。払う税金と、翌期に残る現金の、両方を見て決めます。決算まであと少し。利益が出そうだと分かった瞬間、多くの社長がこう思う。「このまま払うのはもったいない」「何か買っておいたほうがいいのか」「間に合う対策はあるのか」。岐阜でも毎年この相談が集中します。この記事では、決算前に本当に効く手と、やってはいけない手を、判断できる形で整理します。読み終える頃には、慌てて経費を作る前に、何を確認すればいいかが分かるはずです。そして、税金を減らすことと会社を守ることの、どちらを優先すべきかも見えてくるはずです。
この記事のポイント
- 節税の目的は納税額の最小化ではなく、翌期に残る現金の最大化。この順番を間違えると、税は減っても会社は弱ります。
- 決算前にできる手は「利益の繰り延べ」と「本当に必要な支出の前倒し」に大別できる。その多くは税を消すのではなく、先送りしているだけです。
- 迷ったら「これは節税がなくても買うものか」で判断する。この一問で、無駄な支出の大半は止まります。
この記事の結論
- 決算前は、現金が出ない節税を先に検討する
- 現金が出る節税は「もともと必要な支出」だけに絞る
- 多くの節税は「消す」ではなく「先送り」だと理解する
- 節税より、納税資金と翌期の資金繰りの確保を優先する
- 判断に迷ったら、決算をまたぐ前に一度相談する
決算前にまず理解すべき「節税の正体」
正直なところ、決算前の相談で一番多い誤解が「節税=得」という思い込みです。ここを整理しないと、対策のたびに会社が痩せていきます。
税金を減らすことと、お金が残ることは別の話
ある建設業の社長から、決算1か月前に電話がありました。「利益が800万ほど出そうだから、車を1台買おうと思う」。気持ちは分かります。でも、そこで一度立ち止まってもらいました。仮に300万円の車を買えば、確かに経費は増え、税金はいくらか下がる。ただし手元からは300万円が出ていきます。法人の実効税率をおおむね3割前後と見ても、その車で減る税金は100万円ほど。差し引き200万円の現金が、税金以上に会社から消える計算です。「税金を払いたくない」という感情だけで動くと、この200万円が見えなくなる。よくあるのが、この見落としです。しかも新車は、購入した年に全額を経費にできるわけではありません。減価償却といって、車なら数年に分けて少しずつ経費化していく決まりです。つまり300万円払っても、今期に落とせるのはその一部だけ。「大きな買い物で一気に節税」という期待は、決算前ほど外れやすいのです。
「消える節税」と「先送りの節税」を分ける
決算前の対策には、大きく2種類あります。ひとつは、その年の利益を翌期以降にずらすだけの「繰り延べ」。決算賞与や、短期前払費用の活用、一部の保険などがこれにあたります。税金が消えたわけではなく、支払う時期を後ろへずらしただけ。翌期に利益が出れば、結局そこで課税されます。もうひとつは、本来使う予定だったお金を今期に前倒しして経費にする手です。実は、決算前に「魔法のように税金だけ消える」方法はほとんどありません。国税庁が示す考え方でも、経費として認められるのは事業に必要な支出に限られます。無理に作った経費は、後の税務調査で否認され、加算税や延滞税まで含めて、かえって重い負担になることがあります。帝国データバンクなどの調査でも、資金繰りの悪化は黒字の会社でも起きるとされます。節税で現金を薄くした会社ほど、そのリスクに近づく。ここは冷静に線を引きたいところです。
判断基準:その支出は「節税がなくても」するのか
迷ったときに使ってほしい判断基準がひとつあります。「これは、節税という理由がなくても買うものか」。この問いにためらいなく「買う」と言えるなら、前倒しの価値はあります。逆に「節税になるなら」という枕詞がつくものは、たいてい不要な支出です。先ほどの建設業の社長も、この問いで考え直しました。結論は「その車は来期買う予定だったから、今期に前倒しする」。節税のために増やしたのではなく、もともと必要な支出のタイミングを寄せただけ。これなら、お金は生きます。判断が変わったのは、税額ではなく「残る現金」を先に見たからでした。電話口の声が、最初の焦りから、少し落ち着いたトーンに変わったのを覚えています。「税金の話だと思ってたけど、資金の話だったんだな」。そのつぶやきが、この判断の本質を言い当てていました。急いで何かを買うより、まず自分の会社の現金の流れを見る。それだけで、決算前の景色は変わります。
決算前に現実的に打てる手と、その順番
ここからは、実際に決算前へ間に合いやすい手を、現金が出るかどうかで並べます。順番が大事です。現金を減らさない手から検討します。
現金を減らさずにできること
まず見直したいのが、現金がほとんど出ない対策です。回収の見込みが立たない売掛金の貸倒れの検討、使わなくなった在庫や固定資産の評価の見直し、計上漏れになっている未払費用の確認、少額の消耗品を期末までに使い切る形での経費化。地味ですが、これらは新たな出費なしに利益を適正化できます。ある小売業では、倉庫に眠っていた売れ残り在庫の評価を正しく落とし直しただけで、数十万円の利益が調整され、余計な買い物をせずに済みました。社長は「棚卸って、こんなに効くのか」と半分あきれ、半分ほっとした表情でした。加えて、決算月までに発生している家賃や外注費で、まだ支払っていない分も、未払費用として今期の経費にできる場合があります。請求書の締め日と決算日のずれを一枚ずつ確認するだけで、意外な計上漏れが出てくる。派手さはない。でも、いちばん健全な一手です。現金を守りながら数字を整える、この順番を崩さないことが大切です。
現金は出るが、意味のある支出
次に、現金は出るけれど「もともと必要だった」支出です。翌期に予定していた広告や修繕、備品の入れ替え、社員へ報いる決算賞与など。決算賞与は、期末までに支給額を各人へ通知し、一定期間内に実際に支払うなど要件を満たせば、その期の経費にできる場合があります。ケースによりますが、頑張った社員に還元しつつ経費にもなるなら、現金の出方としては納得感がある。ただし、要件を外すと否認されるので、そこは慎重に。前払費用も、家賃や保険料などを1年分先払いする形で今期の経費にできることがありますが、これも条件と継続適用が前提です。
判断基準:節税より先に「納税資金」を確保できているか
もうひとつの判断基準は、順番の話です。節税を考える前に、払うべき税金の資金を確保できているか。ここを飛ばす社長が意外に多い。利益が出るということは、税金も発生するということ。日本政策金融公庫や金融機関の一般的な見方でも、手元現金は月商の1〜3か月分程度を安全圏とする考え方があります。節税で現金を使い切り、いざ納税や翌期の運転資金で詰まる。これでは本末転倒です。中小企業庁の資料でも、資金繰りの安定は経営の土台とされています。税金を1円惜しんだ結果、翌期の仕入れや給与の支払いで金融機関に頭を下げる。そんな順番はもったいない。最初は半信半疑で「税金は1円でも減らしたい」と言っていた飲食業の社長も、資金繰り表を一緒に見て、こう言い直しました。「減らすより、残すほうが怖くないな」。その一言に、この記事で伝えたいことがすべて詰まっています。
よくある質問
Q1. 決算直前でも間に合う節税はありますか?
あります。ただし多くは利益の繰り延べで、税が消えるわけではありません。現金が出ない在庫・売掛金の見直しから検討するのが現実的です。
Q2. とりあえず経費を増やせば税金は減りますか?
減りますが、現金はそれ以上に出ていきます。実効税率3割なら、100万使って減る税は約30万。差の70万は会社から消えます。
Q3. 決算賞与は節税になりますか?
要件を満たせば今期の経費にできます。期末までの通知と一定期間内の支給などが条件です。社員還元を兼ねられる点で意味のある支出です。
Q4. 保険で節税できると聞きましたが本当ですか?
多くは支払いの繰り延べで、解約時に課税されることが多いです。「消える」節税ではありません。目的が保障か貯蓄かを先に整理すべきです。
Q5. 車や設備を買うのはお得ですか?
もともと必要なら前倒しの価値はあります。節税だけが理由なら、現金流出が税の減額を上回るため損になりがちです。
Q6. 節税をやりすぎると税務調査で問題になりますか?
事業に不要な支出は否認され、追徴の対象になり得ます。無理な経費作りより、必要な支出の適正計上を優先するほうが安全です。
Q7. 黒字なのに現金がありません。なぜですか?
利益と現金は一致しません。売掛金や在庫、借入返済で現金は動きます。節税より資金繰り表での現金の流れの把握が先です。
Q8. いつ相談するのがよいですか?
決算の2〜3か月前が理想です。期末直前だと打てる手が減ります。利益が見えた時点で早めに動くほど選択肢が残ります。
最後に整理しておきたいこと
- 決算前の節税は「税を減らす」より「現金を残す」で判断する
- 対策には「先送り」が多く、税が消えるわけではない
- 現金が出ない手から検討し、出る手は必要な支出に絞る
- 「節税がなくても買うか」で無駄な支出を止める
- 節税の前に、納税資金と翌期の運転資金を確保する
利益が見えた今こそ、慌てて経費を作る前に、翌期に残る現金を一度そろばんで置いてみてください。判断に迷うなら、決算をまたいでしまう前に、岐阜の藤垣会計事務所へ気軽に相談してみてください。
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経営計画を考える前提として、企業成長・資金繰り・人材・承継まで含めた背景知識を整理したい方は、先にこちらもご覧ください。
このテーマは、判断の切り口ごとに考え方が分かれます
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