役員報酬の決め方で悩む社長へ|会社を守るための本当に安心な判断ガイド
役員報酬を感覚で決めている経営者へ|生活費ではなく「会社全体最適」で決めるべき理由
役員報酬は「社長の生活費」ではなく、「会社全体の利益と資金繰りを守るための経営ツール」として、税務ルールと数字に基づいて決めるべきです。 感覚で決めている状態を続けると、法人税・社会保険・銀行評価の3つでじわじわと損をし、いざというときに会社を守れなくなります。
【この記事のポイント】今日のおさらい:要点3つ
- 役員報酬は「定款・株主総会決議」「定期同額給与」などの税務ルールを守らないと、損金不算入になり法人税が増えるリスクがあります。
- 中小企業では「売上の3〜10%」「利益の20%以内」が一つの目安ですが、本当に重要なのは会社のキャッシュフローと社長のライフプランの両方から逆算して決めることです。
- こういう人は今すぐ見直すべきです:役員報酬をここ3年「なんとなく据え置き」か「銀行に言われたまま」にしている経営者。
この記事の結論
- 一言で言うと「役員報酬を生活費ベースで決めるのをやめて、会社全体の利益・税金・資金繰りから“逆算して”決めるべき」です。
- 最も重要なのは、「税務上認められる形(定期同額給与・事前確定届出給与)で」「会社のキャッシュフローを壊さない水準」に設定することです。
- 失敗しないためには、「社長の希望額」と「会社が出せる額」を分けて整理し、顧問税理士と一緒に“数字で説明できる報酬額”を決めることです。
夜中に「役員報酬 決め方」と検索してしまう社長がハマりがちな罠
検索タブだけ増えていく「感覚ベース」のモヤモヤ
経営が落ち着いた夜に、ふと頭に浮かぶのは「この役員報酬、本当にこのままでいいのか」という小さな引っかかりです。 スマホで「役員報酬 決め方」「役員報酬 いくらが得」と検索してみるものの、節税の記事、創業者向けの記事、年商10億超のケースなどが混ざり、読み進めるたびにブラウザのタブだけが増えていきます。
正直なところ、私も最初に中小企業の役員報酬の記事を読み漁ったとき、「結局いくらが正解なのか」が分からず、同じキーワードを何度も打ち直した経験があります。 よくあるのが、「ネットに書いてある“相場”と、うちの会社の現実」が全然噛み合わないパターンです。
実体験①:年商1.5億の会社で「社長が取り過ぎていた」ケース
以前、年商1.5億・従業員8名のサービス業の社長と話したときのことです。決算書を拝見すると、役員報酬は年間1,800万円。従業員の平均年収は300万円台半ばでした。
私「役員報酬はどうやって決めたんですか?」 社長「生活費と、子どもの学費と、住宅ローンを足して、“これくらいは必要だろう”って感覚ですね」
数字を一緒に見ながら、売上に対する役員報酬の割合を計算すると、およそ12%。一般的な目安と言われる「売上の3〜10%」「利益の20%以内」を超えており、銀行の格付け評価にも悪影響を与えていました。
「正直なところ、このままだと、いざ設備投資や新店舗出店の融資を受けたいときに、銀行の印象が良くないです」と率直にお伝えしました。 ケースによりますが、この社長のように「会社の成長ステージに比べて、役員報酬だけが先に増えている」状況は珍しくありません。
実体験②:逆に「社長が取らなさすぎて、会社が回らなくなった」ケース
一方で、まったく逆のケースもありました。年商8,000万円、製造業の社長は、役員報酬を月20万円に抑えていました。
社長「社員に払うので精一杯で、自分は後回しでいいと思ってきたんです」
ところが、社長の自宅の生活はギリギリで、ボーナスもなく、奥様がパートで家計を支える状態が何年も続いていました。 その結果、社長自身が疲れ切ってしまい、新規案件の商談や設備更新の判断が遅れ、気付けば同業他社に取引を奪われるようになってしまったのです。
正直なところ、このケースはかなりきつい現場でした。 「社長が生活の不安から解放されないまま走り続けていたせいで、会社全体が守れなかった」という、誰も責められない結末です。
この2つの実体験から分かるのは、「取り過ぎも危険だが、取らなさすぎも同じくらい危険」という事実です。 役員報酬は、「社長の生活」と「会社の継続」の両方を成立させるラインを探る作業だと、痛感させられました。
役員報酬を「会社全体最適」で考えるための3つの軸
税務のルールを外すと、一発で損をする
まず前提として、役員報酬には税務上のルールがあります。国税庁の取り扱いでは、役員給与は原則として損金算入が認められず、一定の要件を満たす「定期同額給与」「事前確定届出給与」などに限って経費として認められます。
ポイントは次の3つです。
- 役員報酬は「定款または株主総会決議」で決める必要がある。
- 「定期同額給与」が原則で、事業年度開始から3か月以内に金額を決め、原則として毎月同じ金額で支給する。
- ボーナス的に支払う場合は、「事前確定届出給与」として支給時期・金額を事前に税務署へ届出しないと損金算入できない。
よくあるのが、期の途中で「利益が出すぎたから社長の報酬を増やして調整しよう」と考えてしまうパターンです。 ケースによりますが、このやり方をすると、その増額部分が損金として認められず、法人税が増えてしまうリスクが高いです。
相場と資金繰りから「上限」を決める
次に、「どこまで取っていいか」の上限です。 大手や公的なデータを見ると、中小企業の役員報酬の平均値や目安があります。たとえば、民間調査では中小企業の役員報酬の平均が年600〜700万円台、また別の専門家は「売上の3〜10%」「年間利益の20%以内」を一つの目安として紹介しています。
加えて重要なのが、会社のキャッシュフローです。
- 月次の売上と粗利
- 固定費(人件費、家賃、リース料など)
- 借入金の元利返済額
これらを踏まえて、「役員報酬をいくらにすると、毎月いくら現金が残るのか」をシミュレーションしておく必要があります。
私が関わったある社長は、役員報酬を月80万円から60万円に下げることで、年間240万円のキャッシュを捻出し、その資金を新規設備投資の頭金に回しました。 結果として、翌期の売上が15%増え、役員報酬も「会社の成長に合わせて」少しずつ戻していくことができました。 「自分の報酬を下げた」のではなく、「会社全体を一段上に上げるための一時的な調整」と捉え直したのが印象的でした。
社長のライフプランから「下限」を決める
一方で、「どこまで下げてはいけないか」の下限も同じくらい重要です。 ライフプランの視点からは、
- 家計の固定費(住宅ローン、家賃、教育費、保険など)
- 今後5〜10年の大きな支出(子どもの進学、住宅リフォームなど)
- 老後資金の積立(退職金・賃貸収入・金融資産など)
といった項目を整理し、「最低限必要な年間手取り」を割り出す必要があります。
正直なところ、ここを曖昧にしたまま「会社のため」と言って役員報酬を下げ続けると、先ほどのように社長自身が消耗し、結果的に会社全体のパフォーマンスを落としてしまいます。 ケースによりますが、「生活費の100%を役員報酬で賄う」のではなく、「一部を配当や別の収入源で補う」など、複数の選択肢を組み合わせる発想も必要になります。
現場で見た「役員報酬の見直し」3つのビフォーアフター
事例①:年商1.5億のサービス業、役員報酬を年300万円下げて銀行評価が改善
【ビフォー】 先ほど紹介した年商1.5億のサービス業A社。役員報酬は年間1,800万円、売上に対する割合は約12%。 決算書を見た金融機関の担当者は、「もう少し役員報酬を抑えれば自己資本が積み上がり、格付けも上がりますね」と柔らかく指摘していました。
【葛藤】 社長は最初、「自分の給料を減らせと言われているようで、正直腹が立った」と本音を漏らしました。 私も、「また銀行に言われるがままに絞られるのでは」と感じたことがあります。 ただ数字を並べてみると、役員報酬を年300万円下げるだけで、5年後には自己資本が1,500万円以上増える試算になりました。
【アフター】 役員報酬を1,800万円から1,500万円に変更し、その分を内部留保に回した結果、3年後には銀行からのプロパー融資を受けやすくなり、新店舗の出店もスムーズに進みました。 社長は「翌年の決算説明で、銀行担当者から“だいぶ筋肉質になりましたね”と言われたのが妙にうれしかった」と笑っていました。 生活は少し引き締める必要がありましたが、「数字で説明できる役員報酬」に変えたことで、会社としての信用力が一段上がったのです。
事例②:創業3年目の会社、役員報酬を上げることで採用力が回復
【ビフォー】 別のIT系B社は、創業3年目で年商6,000万円。社長は「社員を優先したい」との思いから、役員報酬を月25万円に抑えていました。 しかし、採用面では「社長があまりにも疲れて見える」「将来が不安」と感じた求職者が辞退するケースが相次いでいました。
【葛藤】 社長は、「自分だけが我慢していれば会社は回る」と信じていましたが、実はその我慢が会社の雰囲気を重くしていたのです。 そこで、ライフプランを踏まえて、役員報酬を月25万円から35万円へ引き上げることにしました。正直なところ、最初は「社員に申し訳ない」という気持ちが強く、何度も迷われていました。
【アフター】 役員報酬を上げたことで、社長の生活は少し楽になり、表情にも余裕が戻りました。 半年後の採用面接で、応募者から「社長が楽しそうに事業の未来を話しているのを見て安心した」と言われたとき、社長は「自分が苦しそうにしていると、会社の将来も苦しそうに見えるんだと気づいた」と話していました。 翌朝の出社時、社長は久しぶりにコンビニで好きなコーヒーを買い、「これくらいの余裕はあっていい」と小さくつぶやいたそうです。
事例③:税務調査で指摘を受ける前に「事前確定届出給与」で賞与設計をやり直したケース
【ビフォー】 C社は年商2億、社員15名。社長は毎年決算間際に、「利益が出過ぎたから社長賞与で調整しよう」と、臨時の役員賞与を支給していました。 ところが税理士から、「このままだと税務調査で否認される可能性が高い」と指摘され、不安になって相談に来られました。
【葛藤】 社長は「また騙されるんじゃないか」「事前確定届出なんて、手続きが面倒なだけじゃないか」と警戒していました。 正直なところ、私も最初は「届出書類が増えるのは大変だ」と感じていましたが、国税庁や弥生などの解説を確認すると、要件を満たせば役員賞与を損金算入できる明確なルールがあると分かりました。
【アフター】 翌期からは、
- 期首に「役員賞与の額と支給時期」を決めて株主総会で決議
- 税務署へ事前確定届出給与の届出書と議事録を提出
- 決めた通りの時期・金額で役員賞与を支給
という流れに切り替えました。 社長は「ルールの枠の中でやっている安心感がある」と話し、税務調査の不安が一つ減ったことで、本業の判断に集中できるようになりました。
よくある質問(FAQ)
Q1. 役員報酬はいつ決めないといけないですか?
A1. 原則として、事業年度開始から3か月以内に決定する必要があります。 この期間を過ぎて変更すると、増額分が損金算入できないリスクが高くなります。
Q2. 期の途中で役員報酬を変えるとどうなりますか?
A2. 原則として「定期同額給与」の要件を外れるため、増額部分が損金不算入となり、法人税負担が増える可能性があります。 特例はありますが、慎重な検討が必要です。
Q3. 役員報酬は高い方が節税になりますか?
A3. 役員報酬を増やすと法人税は減りますが、社長個人の所得税・住民税・社会保険料が増えます。 会社と個人のトータルで見ると、「取り過ぎ」は必ずしも得ではありません。
Q4. 中小企業の役員報酬の相場はいくらですか?
A4. 調査によって差はありますが、中小企業の役員報酬の平均は年600〜700万円台というデータがあります。 ただし、業種・地域・会社規模で大きく変わるため、「相場」はあくまで目安です。
Q5. 役員賞与を経費にするにはどうすればいいですか?
A5. 「事前確定届出給与」として、支給額と時期を事前に株主総会で決議し、税務署へ届出を出したうえで、その通りに支給する必要があります。 要件を外すと、損金不算入になります。
Q6. 銀行は役員報酬をどう見ていますか?
A6. 銀行は、売上や利益に対する役員報酬の割合や、社員とのバランスを見て、「社長が取り過ぎていないか」「内部留保が十分か」を判断します。 役員報酬が高すぎると、格付けにマイナスになることがあります。
Q7. 赤字のときは役員報酬をゼロにした方がいいですか?
A7. ケースによりますが、社長の生活が成り立たないほど下げると、経営判断の質が落ちるリスクがあります。 一時的に減額しても、「最低限必要なライン」は確保するべきです。
Q8. 合同会社と株式会社で、役員報酬の考え方は違いますか?
A8. 合同会社でも株式会社と同様に、役員報酬は会社の業績・税金・社会保険・資金繰りを踏まえて決める必要があります。 ただし、定款や社員総会の位置づけなど、法的な枠組みは一部異なります。
Q9. 役員報酬を“後から”調整する裏ワザはありますか?
A9. 税務上は、期中の恣意的な調整を防ぐためのルールが整備されており、安易な裏ワザは通用しません。 正直なところ、「正攻法で設計する」のが一番安全で、結果的にトータルの負担も小さくなります。
まとめ
- 役員報酬は「社長の生活費」ではなく、「会社全体の利益・税金・資金繰りをコントロールするための経営ツール」です。
- 税務上は「定期同額給与」「事前確定届出給与」などのルールを守らないと、損金不算入となり法人税が増えるリスクがあります。
- 適正額は、「相場(売上の3〜10%・利益の20%以内)」と「会社のキャッシュフロー」、そして「社長のライフプラン」の3つを組み合わせて決めるのが実務的です。
- よくあるのが、「なんとなく据え置き」「銀行や税理士に言われたまま」という決め方ですが、これは長期的に見ると会社と社長の両方にとって損なパターンです。
- 迷っているなら、「社長の希望額」と「会社が出せる額」を紙に書き出し、顧問税理士と一緒に“数字で説明できる役員報酬”に変えていくのがおすすめです。
こういう人は、今すぐ専門家に相談すべきです。 ここ3年、役員報酬の根拠を「なんとなく」で済ませているなら──それは、会社とご自身の未来を守るための見直しサインです。
最初に一歩踏み出すとしたら、「今の役員報酬で5年後の会社と生活がどうなっているか」を一緒にシミュレーションしてみませんか。
経営計画・売上改善・資金繰りでお悩みの方へ
会社の数字と未来を見える化し、次に打つべき一手を一緒に整理しませんか?
経営計画は、単なる数字の表ではありません。売上、資金繰り、人材、税務、事業承継までを整理し、
会社がこれからどこへ向かうべきかを判断するための大切な土台です。
藤垣会計事務所では、税務・会計の視点だけでなく、経営全体を見据えた相談に対応しています。
目的別に詳しく知りたい方はこちら
藤垣会計事務所が大切にしている考え方
数字だけを見て終わるのではなく、経営者の想い、会社の現状、将来の課題まで含めて整理することを大切にしています。
藤垣会計事務所の考え方や支援姿勢については、こちらの記事でも紹介しています。
経営計画・売上改善・資金繰り・税務のご相談は
藤垣会計事務所へお気軽にご相談ください
「何から相談すればいいかわからない」という段階でも大丈夫です。
まずは現状の課題を整理するところから、一緒に考えていきましょう。
藤垣会計事務所
電話番号:
058-215-1030
営業時間:平日 9:00〜17:30
定休日:土日祝
所在地:〒500-8367 岐阜県岐阜市宇佐南2丁目5−5