社員が辞める会社の特徴で悩む社長へ|失敗を避けて会社を守る判断基準
社員が辞める会社は給与だけでなく承認と将来不安が重なっている
社員が続けて辞めている会社は、「給与」だけでなく「承認の不足」と「会社の将来への不安」が重なっている可能性が高いです。理由は、厚生労働省や各種調査でも、退職理由として「給与・労働条件」に加え「会社の将来性への不安」「評価や人間関係への不満」が上位に並んでいるからです。対象は、中小規模で経営者との距離が近いのに、「感謝や評価が伝わらない」「将来像が示されない」ことで静かに離職が続いている会社です。
この記事のポイント(今日のおさらい3つ)
- 離職が続く会社の特徴は、「給与」より先に「承認の薄さ」と「未来の見えなさ」が積み重なっていること。
- 対策は、制度づくりの前に「日常の承認」と「3年後の会社と社員の姿」を言葉にすることから始めた方が早い。
- 正直なところ、全部を一気に変える必要はなく、「辞めてほしくない層」を決めて、そこから優先的に手を打つのが現実的です。
この記事の結論
一言で言うと、社員が辞める会社の根本原因は「給与」だけでなく、「承認」と「未来への安心」が欠けていることです。
- 最も重要なのは、「いま何をしてくれているのか」と「この先どうなれるのか」を、経営者が具体的な言葉で伝えることです。
- 失敗しないためには、「制度から」ではなく「日常の対話と評価の見える化」から順番に整えることです。
社員が辞める会社の“いま”何が起きているか
退職届の封筒を見ただけで、一日のリズムが崩れる朝
朝イチで机の上に置かれた白い封筒。「ああ、またか」と分かっているのに、開封する前に一度だけ深く息を吐いてしまう。夜になると、Googleの検索窓に「社員 辞める 会社 特徴」「若手 離職 理由」と何度も同じ言葉を打ち込んでいる自分に気づく。
SNSでは「心理的安全性」「エンゲージメント」の言葉が飛び交い、コラムにはきれいな理論が並ぶ。でも、正直なところ、明日のシフトと月末の資金繰りを回すだけで精一杯な日もある。よくあるのが、「また採用広告を出す」「紹介会社に頼む」といった“対症療法”の前に、根本原因を言語化できていないパターンです。
データが示す「辞める理由」は給与だけではない
厚生労働省の調査では、仕事を辞めた人の理由として、「給与・報酬が少なかったから」が重要な要因になっている一方で、「事業や会社の将来に不安を感じたから」「会社の経営方針に不満を感じたから」も大きな割合を占めています。別の大手企業の退職理由調査でも、「職場の人間関係が悪い(35%)」「給与が低い(34%)」「会社の将来性に不安を感じた(28%)」「評価・人事制度に不満があった(22%)」といった回答が上位に並んでいます。つまり、次の3つが絡み合って、「辞めたい」が「辞める」に変わっているということです。
- 給与・労働条件
- 人間関係・評価への不満
- 会社の将来への不安
正直なところ、給与だけを一時的に上げても、「承認されていない」「将来の姿が見えない」状態が続けば、人はまた別の会社を探し始めます。実は、若手社員の調査でも、「お手本になる上司や先輩がいない」「キャリア形成が見込めない」といった“未来不安”が離職理由として挙がっています。
現場で聞いた「辞めていった人の本音」
ここで、私が実際に耳にした現場の声を、少し変えた形で紹介します。ある製造業の20代社員が、退職面談でこんなことを言っていました。
社員A「給料がすごく不満だったわけではないんです。ただ、自分がこの会社で5年後どうなっているか、全然イメージができなかったんです」
別のサービス業の30代スタッフは、こう漏らしていました。
社員B「売上が上がったときは叱られないだけ。クレームがあったら、そのときだけすぐ呼び出されるんですよ」
給与明細の額面より先に、「自分はここに必要とされているのか」「頑張りは見てもらえているのか」「このままいて、自分の人生はどうなるのか」。こうした問いに、日常の中でうっすらと“NO”が積み重なった結果として、最終的な退職という決断が表に現れてきます。
私自身、ある会社の離職分析を手伝ったとき、最初は「同業他社への転職」が主な理由だと聞いていました。しかし、退職者アンケートの自由記述を読むと、「評価のフィードバックが半年に1回しかない」「会社の方向性がいつも直前にしか共有されない」という声が繰り返し出てきた。この瞬間、「給与だけを上げても、この感覚が続く限りまた辞める人は出てくるな」と静かに確信しました。
社員が辞める会社の特徴と、そうならない会社との違い
「承認」が足りない会社と、ありすぎて空回りする会社
ギャラップ社などの調査では、日本企業の従業員エンゲージメントは世界最低レベルと言われ、「熱意あふれる社員」はわずか数%というデータもあります。背景には、「上司からのフィードバック不足」「評価に納得できない」といった承認の欠如があります。ただ、ここで誤解されがちなのは、「褒めればいい」という単純な話ではないこと。よくあるのが、次のような表面だけの対策です。
- 月1回の表彰や賞状で「形だけの承認」を増やす
- 良い話だけを伝え、課題は先送りにしてしまう
対して、“辞めにくい会社”には、次のような特徴があります。
- 日常の仕事の中で、「あのとき助かったよ」と具体的な行動を言葉にして伝える
- 月1回の1on1などで、「できたこと」「できなかったこと」「次に一緒にやりたいこと」をセットで話す
- 目標設定のときに、「なぜその数字なのか」「達成したら何が変わるのか」を丁寧に共有する
正直なところ、これらはどれも手間がかかります。実は、制度だけ導入して運用がついてこない会社も多く、「1on1やってるけど、内容は雑談ばかり」という声も現場ではよく聞きます。なので、「よくある失敗」はこうです。
- 人事制度を入れたが、上司の面談スキルが伴わず、かえって不満が増えた
- 表彰制度だけ作り、日常の小さな承認が減ってしまった
ケースによりますが、まずは経営者自身が“感謝と期待”を言葉にする頻度を増やすだけでも、職場の空気は変わり始めます。
「未来が見えない会社」と「未来を一緒に描ける会社」
各種調査では、「会社の将来性に不安を感じた」「キャリア形成が見込めない」といった理由も、退職理由の上位に含まれています。また、マイナビや他の調査では、「静かな退職(やる気は下げつつ、表向きは在籍)」のきっかけとして、「評価不満」や「成長実感の欠如」が挙げられています。ここで、2つの会社の違いを、私が見た実例で対比します。
- 会社X:売上目標だけを共有。「今年は売上3億を目指します」とだけ伝える
- 会社Y:売上目標に加え、「3年後にはこの事業で地域No.1を目指し、その中でリーダー職が何人必要か」を具体的に話す
Xの社員は、「売上を上げて、結局誰がどうなるのか」が見えないまま、日々の数字だけを追わされる感覚になりがち。Yの社員は、「この数字の先に、自分たちの役割やポジションの変化がある」ことをイメージしやすい。
実は、私が支援したあるIT企業では、「3年後の組織図」を先に描き、それを社員に共有しました。「ここに新しいチームリーダーが2人必要になる」「このポジションは、今の誰かがチャレンジしてほしい」と具体的に話したことで、「会社の将来性=自分の将来性」に少しだけ重なり始めました。その結果、前年は入社3年以内の離職が20%近かったところが、2年後には10%台前半まで落ち着いていきました。
給与テーブルだけをいじると起こる“副作用”
もちろん、給与や労働条件が軽いテーマではないことも事実です。最新の退職理由調査でも、「給与が低い」「労働条件が悪い」が常に上位に並びます。ただ、ここにも「よくある失敗」があります。
- ベースアップを急に行い、利益とのバランスが崩れて、翌年に人員整理をせざるを得なくなる
- 一部の社員だけを大きく上げてしまい、周囲の不公平感を増幅させる
給与は、「承認」と「将来性」とセットで語られないと、満足度が長続きしません。たとえば、次のような話を年1回の面談だけでなく、半期ごとに少なくとも言葉にする必要があります。
- なぜ今回上がったのか(成果・役割・スキル)
- 今後どのような行動や成長を期待しているのか
- 今の会社の状況で、どこまでが現実的なラインか
正直なところ、給与テーブルの見直しは時間もお金もかかります。だからこそ、「今すぐ全部は変えられないが、これだけは今年やる」と決め、社員にもその優先順位を共有することが、信頼の土台になります。
現場で実行できる「離職を減らす3つの一歩」
1on1より先に「日常3秒の承認」を増やす
多くの会社が、いきなり1on1や人事制度から手を付けようとします。でも、現場を見ていると、まず効くのは「日常の一言」です。たとえば、次のような声かけです。
- 退勤前に、「今日あのクレーム対応、助かったよ」と具体的に伝える
- 期末の数字だけでなく、「今月は新人フォローにかなり時間を割いてくれたよね」とプロセスを認める
- 朝礼で、「昨日の○○さんの対応で、お客様からありがとうと言われた」と事実を共有する
正直なところ、これを毎日やるのは根気がいります。実は、私自身も、あるチームのマネジメントをお手伝いしたとき、「毎日1人は必ず具体的な行動を称賛する」と自分にルールを課しました。最初の2週間はネタ探しに苦労しましたが、1か月を超えたあたりから、メンバーのほうから「昨日こんなことがあったんです」と報告が増え始めました。
それは、“承認を求めている”というより、「ちゃんと見てもらえるなら、もう少し頑張ろうかな」という小さな変化でした。このレベルの承認が積み重なると、離職のきっかけになる不満の一部は、確実に減っていきます。
「退職しそうな人」ではなく「残ってほしい層」にフォーカスする
離職が続くと、どうしても「誰が辞めそうか」を探す視点になりがちです。しかし、データを見ると、離職理由は多様で、「不一致タイプ」「評価不満タイプ」など、きっかけもパターンも異なります。ここで視点を少し変えて、「この会社に残ってほしい層」を先に決めることをおすすめします。
- 若手の中でも、主体的に動ける人
- 顧客との信頼関係が厚い人
- 将来、リーダーとして育てたい人
この層に対して、次のことを集中的に行います。
- キャリアのイメージを一緒に描く小さな面談
- プロジェクトを任せるなどの“役割の承認”
- 給与以外の面での優先的な投資(研修、時間の裁量など)
私が支援したある店舗チェーンでは、「3年後にこの人たちに店長やエリアマネージャーを任せたい」と決め、10人ほどの“コアメンバー”に対してだけ、月1回の小さな勉強会とフィードバックの場を作りました。全員を一度に変えようとせず、まずはコアを守る。結果的に、その層の離職はほぼゼロになり、店舗全体の離職率も2年で約30%から18%台まで下がっていきました。
ケースによりますが、「全員を平等に」より、「残ってほしい人から順番に」が、現実の経営にとっては合理的な選択になることも多いです。
「辞める前」に出るサインを見逃さない仕組み
多くの退職は、ある日突然、ではありません。静かな退職(仕事量はこなすが、心理的に離れていく状態)の調査でも、「きっかけは小さな不一致や評価不満の積み重ね」と分析されています。よくあるサインは、次のようなものです。
- 会議やチャットで発言が減る
- 有給の取り方が急に変わる(まとめて取る、金曜や月曜だけ増える)
- 「まぁ、どっちでもいいです」の口癖が増える
これらは、人事データだけでは見えにくい部分です。だからこそ、現場のリーダーやマネージャーが「最近の変化を共有する場」を月1回でも作ると、早めに気づける可能性が高まります。
私がある会社で導入したのは、「気になる変化メモ」という非常にシンプルなExcelでした。リーダーが気づいた小さな変化を、名前と一言コメントで書くだけ。これを経営陣と人事で月一回見直し、「最近どう?」と声をかけるきっかけにしていきました。
正直なところ、これをやっても全ての離職は防げません。実は、それでも、「本当は3か月前から辞めたいと思っていた」という事後報告の回数は、目に見えて減っていきました。
よくある質問(10問)
Q1:離職が続いたとき、最初に見るべき数字は?
A1:離職率(離職人数÷社員数×100)と、入社3年以内離職率を確認し、どの層で離職が集中しているかを把握するのが出発点です。
Q2:給与と承認、どちらを先にテコ入れすべき?
A2:短期的には承認(評価フィードバック・感謝の言語化)から始めた方が効果が早く、並行して給与テーブルの中期見直しを進めるのが現実的です。
Q3:小さな会社でも、エンゲージメント調査をやる価値はある?
A3:あります。ギャラップ式の12問などを参考に、簡易版アンケートで「承認」「成長実感」「将来の安心」について聞くだけでも傾向が見えます。
Q4:若手の離職が多い場合、対策は違う?
A4:はい。若手は「成長実感」「キャリアの見通し」「お手本となる上司」の影響が大きく、この3点への投資が離職抑制に直結します。
Q5:人間関係の悪化が原因の離職は、どう防げる?
A5:評価面談の場を「告知」だけにせず、双方の期待や不満を言語化する時間にし、第三者(人事や上位者)が時々介入する仕組みが有効です。
Q6:エンゲージメントの低さは、どれくらい深刻?
A6:日本では「熱意あふれる社員」が約6%と世界的にも低く、やる気のない社員が約7割と言われており、放置すると生産性と離職率の両方に影響します。
Q7:離職をゼロにすることは目指すべき?
A7:現実的ではありません。目指すべきは、「辞めてほしくない層の離職」を減らし、「お互いにとってプラスの転職」は応援できる組織です。
Q8:評価制度を作る前に、最低限やるべきことは?
A8:評価の基準を3〜5項目に絞り、半年に1回は「何を見ているのか」を本人と確認する場を持つことです。制度より運用の一貫性が重要です。
Q9:テレワークやシフト制で、承認が伝わりにくい場合は?
A9:オンライン朝礼やチャットでの「見える称賛」、短時間の1on1を組み合わせ、物理的距離をコミュニケーション量で埋める工夫が必要です。
Q10:離職が続いたとき、社員アンケートの公開はどこまで?
A10:個人が特定されない形で「傾向」と「会社としてのアクション」を共有すると、単なる聞き取りで終わらず信頼につながります。
まとめ
- 社員が辞める会社の特徴は、「給与」だけでなく、「承認の不足」と「会社と自分の未来が見えないこと」が重なっている点にある。
- データは、「人間関係」「評価不満」「会社の将来性への不安」が退職理由として大きいことを示しており、日常の対話とキャリアの見える化が避けて通れない。
- 対策の出発点は、「日常3秒の承認」「残ってほしい層への集中投資」「辞める前の小さなサインを拾う仕組み」の3つ。
- 制度づくりよりも、経営者や上司の言葉と態度を少しずつ変えるほうが、離職の流れを変える“初速”になりやすい。
- 正直なところ、離職をゼロにはできないが、「辞めてほしくない人を守れる会社」には変えていける。
こういう人は今すぐ相談すべきです。「退職届を見るたびに、自分のマネジメントを否定された気がしてしまう」「何から変えれば良いか分からず、採用費だけが増えている」と感じているなら、一度、第三者と一緒に“辞めてほしくない層”と“承認と未来の設計”を整理した方がよいタイミングです。この状態ならまだ間に合います。いま残っているメンバーの声を丁寧に拾い、小さな変化を半年ほど続ければ、離職の流れは必ずどこかで緩やかになります。迷っているなら、「まずは1部署だけ」「まずは3人だけ」と範囲を絞って、離職要因の整理とエンゲージメント向上の打ち手を一緒に考えてくれる専門家への相談をおすすめします。