就業規則の作り方で悩む従業員が増えてきた社長へ!何人から必要でどこまで定めるべきか、トラブルを防ぐ就業規則を判断できるように解説

就業規則は、人が増える前に作るべきです。理由は、後から作ると「誰かのために変えた」と受け取られ、角が立つからです。対象は、パートを含めて従業員が5人を超えたあたりの会社。まず結論を言うと、常時10人以上を雇うなら作成と届出が義務になります。ただ、義務だから作る、では意味がない。トラブルを防ぐ盾として使えて初めて価値が出ます。「うちはまだ小さいから要らない?」「ネットの雛形をそのまま使っていい?」「どこまで細かく決めればいい?」。よくあるのが、この三つで手が止まるパターンです。正直なところ、雛形を丸写しした就業規則ほど、いざという時に役に立ちません。この記事では、必要になる人数の目安、最低限定めるべき項目、そして作った後に会社を守る使い方までを判断できるように整理します。岐阜で中小企業の数字を見てきた税理士の視点から、人件費とトラブルコストの両面でお話しします。

この記事のポイント

  • 常時10人以上で作成・届出が義務。ただし9人以下でも作る価値は大きい。人数はきっかけであって、本質は「基準を先に決めておくこと」です。
  • 雛形の丸写しは危険。自社の実態に合わないと、かえってトラブルの火種になる。特に休日・残業・懲戒は、運用と食い違うと武器になりません。
  • 就業規則は「罰する道具」ではなく「迷いを減らす安心装置」。社員も、何をすればよく何がダメかが分かると、逆に働きやすくなります。

この記事の結論

  • 目安は常時10人。でも人が増える前が作り時。
  • 最低限は、労働時間・休日・休暇・賃金・退職・服務規律・懲戒。
  • 雛形は骨組みだけ借りる。中身は自社の運用に合わせる。
  • 迷ったら社会保険労務士と連携。人件費や税務の面は会計事務所が補う。
  • 作って終わりにしない。社員に周知して初めて効力を持つ。

なぜ「就業規則を作るべきか」で迷うのか

就業規則の相談で一番多いのは、「作らないといけないのは分かっているが、後回しにしている」という声です。実は、迷いの正体は人数ではなく「何をどこまで書くのか分からない」という不安にあります。ここを分けて考えると、一気に前に進みます。

「常時10人」の意味を誤解している

労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業場に、就業規則の作成と労働基準監督署への届出を義務づけています。ここでよく誤解されるのが「正社員10人」という数え方。実際にはパートやアルバイトも含めて数えます。だから、正社員6人・パート5人の飲食店は、正社員だけ見れば9人でも、合計11人で義務の対象になり得るのです。「うちは正社員が少ないから関係ない」と思い込んでいた社長が、数え直して青ざめる。ケースによりますが、これは珍しくありません。逆に9人以下なら義務ではない。ただ「義務がない=作らなくていい」とは限らないのが難しいところです。

現場事例:9人の会社で起きたこと

ある岐阜市内の運送関連の会社。従業員9人で、就業規則はありませんでした。社長は「まだ義務じゃないから」と後回しにしていた。ところが、遅刻を繰り返す社員に注意しても改まらず、いざ処分しようとした時に手が止まった。「何を基準に、どこまでの処分が許されるのか」を決めた文書が、どこにもなかったからです。結局その場は口頭注意で終わり、他の真面目な社員から「あの人だけ許されるのはおかしい」と不満が出た。ため息をつきながら社長がこぼした言葉が忘れられません。「ルールが無いと、叱ることすら怖い」。義務のない9人の会社でも、基準の不在は確実に組織を蝕みます。帝国データバンクなどの調査でも、中小企業の悩みの上位に人材の定着が挙がりますが、その足元には「基準のあいまいさ」が潜んでいることが多いのです。

判断基準:自社に就業規則が要るかの見極め方

作るべきかどうかは、次の五つで判断すると迷いません。①従業員が今後10人に届きそうか。②パートを含めて雇用形態が二種類以上あるか。③残業や休日出勤が発生しているか。④退職や解雇で一度でも揉めた、または揉めそうな空気があるか。⑤助成金の申請を考えているか。一つでも当てはまるなら、義務の有無に関わらず作る価値があります。特に④が当てはまる会社は、正直、待ったなしです。就業規則は、揉めてから作るものではなく、揉める前に備えるものだからです。

トラブルを防ぐ就業規則の作り方

ここからが本題です。作ると決めたら、次は「何をどこまで書くか」。完璧を目指すと一歩も進めなくなるので、まずは骨格から固めます。

最低限定めるべき項目

就業規則には、必ず記載すべき事項と、制度がある場合に記載する事項があります。最低限の骨格は、労働時間・休憩・休日・休暇、賃金の決め方と締め支払い、そして退職と解雇に関するルール。ここに、日々の行動の約束事である服務規律と、違反した時の懲戒を加えます。この「退職・解雇」と「懲戒」の二つが、実務でもっとも効いてくる部分です。細かい福利厚生の文言より、まずこの背骨をきちんと自社の実態に合わせる。たとえば、繁忙期に休日出勤が多い会社なら、休日の振替や割増賃金の扱いを曖昧にしない。ここが空欄のままだと、後で必ず火種になります。

雛形の丸写しが招いた失敗

もう一つの事例です。ある小売業の社長が、ネットで拾った雛形をそのまま就業規則として使っていました。最初は半信半疑で「これで十分だろう」と。ところが、その雛形には「賞与は年2回支給する」と書かれていた。実際の会社は業績次第で賞与を出したり出さなかったり。ある年、賞与を見送ったところ、社員から「規則に年2回と書いてあるじゃないですか」と詰め寄られた。書いてある以上、会社はそれに縛られます。慌てて規則を直そうとしたものの、社員に不利な変更は簡単には通りません。結局、その年は無理をして賞与を捻出し、資金繰りが一時的に苦しくなりました。人件費は一度上げると下げにくい。雛形は便利ですが、自社の運用と一文字でも食い違えば、盾ではなく足かせになります。

迷ったら社労士と連携し、数字面は会計事務所で補う

就業規則そのものの作成や労働基準監督署への届出は、社会保険労務士の専門領域です。無理に自前で完璧を目指すより、法律面は専門家に任せたほうが速く、確実です。一方で、就業規則は人件費の設計図でもあります。賞与の出し方、残業代の見込み、退職金の積み立て。これらは会社の資金繰りや利益に直結します。だからこそ、私たち会計事務所は社労士と連携しながら、「この賃金設計で会社の数字は回るのか」という視点を補います。実際、岐阜の顧問先でも、規則づくりの入口を社労士に、人件費のシミュレーションを当事務所が担う、という役割分担で進めた例が何件もあります。餅は餅屋、そのうえで数字で裏を取る。これが遠回りに見えて一番安全です。

よくある質問

Q1. 就業規則は何人から作らないといけませんか?

常時10人以上の労働者を使う事業場で、作成と届出が義務になります。パートやアルバイトも人数に含めて数えます。9人以下でも作ること自体は可能で、むしろ推奨されます。

Q2. 従業員が9人でも作ったほうがいいですか?

はい、作る価値は十分あります。義務はなくても、遅刻・退職・懲戒などの基準がないと、注意も処分も後手に回ります。人が増える前に整える会社ほど、後で揉めにくい傾向があります。

Q3. ネットの雛形をそのまま使ってはいけませんか?

骨組みとして参考にするのは有効ですが、丸写しは危険です。賞与や休日の記載が自社の運用と食い違うと、会社がその文言に縛られます。最低限、自社の実態に合わせて直してください。

Q4. 就業規則を作るのにどれくらい時間がかかりますか?

ケースによりますが、実態のヒアリングから届出まで、一般的に1〜2か月程度を見ておくと安心です。急ぐより、休日・賃金・懲戒の実態確認に時間をかけたほうが、後の手戻りが減ります。

Q5. 一度作ったら変更できませんか?

変更はできます。ただし社員に不利な変更は、原則として合理性と説明・同意が必要で、簡単ではありません。だからこそ、最初に無理な約束を書き込まないことが大切です。

Q6. 作ったら社員に見せないといけませんか?

はい、周知して初めて効力を持ちます。金庫にしまったままでは意味がありません。全員がいつでも見られる場所に置く、データで共有するなど、周知の事実を残しておくことが重要です。

Q7. 就業規則があると助成金に有利ですか?

多くの雇用関係の助成金では、就業規則の整備が要件や前提になっています。整っていないと申請の入口で止まることも。制度活用を考えるなら、早めに準備しておくと選択肢が広がります。

Q8. 作成は税理士に頼めますか?

作成・届出の実務は社会保険労務士が専門です。当事務所は社労士と連携し、賃金や賞与が会社の資金繰りに与える影響を数字で検証する役割を担います。窓口としてまず相談いただいて構いません。

最後に整理しておきたいこと

  • 常時10人以上で作成・届出が義務。パートも人数に含める。
  • 9人以下でも「基準の不在」は組織を蝕む。人が増える前が作り時。
  • 最低限の背骨は、労働時間・休日・賃金・退職・服務規律・懲戒。
  • 雛形の丸写しは足かせになる。自社の運用に一文字単位で合わせる。
  • 作成は社労士、人件費の検証は会計事務所。連携で盤石にする。

就業規則は、社員を縛るためではなく、社長自身が安心して人を叱り、任せ、育てるための基準です。今はまだ小さいから、と後回しにしているうちに、人は増え、トラブルの芽も一緒に育ちます。まだ揉めていない今こそ、動くタイミングです。まずは自社の休日・賃金・懲戒の実態を紙一枚に書き出すところから始めてみてください。その一枚を持って相談いただければ、話はぐっと早く進みます。

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