採用してもすぐ辞める会社は、入り口ではなく入社後の三週間を作り直すべきである

採用してもすぐ辞める。原因の多くは、面接ではなく入社直後にあります。人が足りないから急いで採り、急いで現場へ放り込む。その結果、三か月ももたずに去っていく。順番が逆なのです。まず入社後の受け入れを整える。それから採用を回す。この設計ができている会社は、同じ求人費でも定着率がまるで違う。「うちは何度採っても続かない」「もう採用に疲れた」「そもそも岐阜で人が採れない」。そう感じているなら、いま見直すべきは求人票の書き方ではありません。この記事では、早期離職が起きる本当の理由と、明日から現場で変えられる判断基準を整理します。何を直せば辞めなくなるのか、その順番が分かります。

この記事のポイント

  • 辞める原因は入社後にある。面接での見極めより、入社から最初の一か月の受け入れ方が定着を左右します。
  • 「聞ける人がいない」が最大の離職要因。放置された新人は、三週間で心が折れます。仕組みで防げます。
  • 採用より定着を先に整える。穴の空いたバケツに水を注いでも減るだけ。まず穴をふさぐ順番が正しい。

この記事の結論

  • 早期離職の多くは、能力不足ではなく受け入れ体制の不足で起きる
  • 入社後三週間で「話しかけられる相手」を用意できるかが分岐点
  • 辞める理由を辞めた本人に聞いても本音は出にくい。残った社員に聞く
  • 採用を増やす前に、定着の仕組みを一つ作るほうが費用対効果が高い
  • 「合わない人を採った」で片づけると、同じ離職が延々と続く

なぜ、採ってもすぐ辞めるのか

正直なところ、多くの社長が離職の原因を採用段階に求めます。「見る目がなかった」「あの人は最初から続かないタイプだった」。気持ちは分かります。でも、それだと次も同じことが起きる。

辞めるのは「入り口」ではなく「入った後」

厚生労働省の調査では、新規学卒者のうち一定割合が入社三年以内に離職する傾向が長く続いています。中小企業に限れば、その割合はさらに高くなりやすい。ここで大事なのは、辞めた人の多くが「仕事ができなかったから」辞めたわけではない、という点です。実際には、聞きたいことが聞けない、放っておかれる、自分がここにいる意味が分からない。こうした入社後の体験が積み重なって、静かに心が離れていきます。面接でどれだけ良い人を選んでも、入った後の三週間が空白なら、同じ結果になります。

ある建設業の現場で起きたこと

岐阜のある建設会社の社長から、こんな相談を受けました。「二人採ったのに、二人とも一か月で辞めた。もう採用が怖い」。話を聞くと、初日に道具の場所だけ教えて、あとは「見て覚えて」。忙しい現場で、誰も新人に話しかける余裕がなかった。新人は分からないことを聞けず、間違えると怒られ、昼休みも一人。三週間目に「体調が」と言って来なくなりました。社長は「根性がない」と言いましたが、実際に折れたのは根性ではなく、居場所です。この会社に足りなかったのは、採用力ではありませんでした。

この社長は、求人広告にかけたお金を計算して、ため息をつきました。二人分の募集費と、教えかけた時間。それが一か月で消えた。しかも現場は人手不足のまま。「もう一回採るのか」とつぶやいた表情には、疲れがにじんでいました。採用のたびに現場が疲弊し、残った社員も「どうせまた辞める」と新人に冷たくなる。この悪循環に気づけるかどうかが、最初の分かれ道でした。

もう一つ、飲食店の例

別の飲食店では、逆のことが起きていました。パートさんが長く続く。理由を聞くと、店長が入社初日に必ず一時間、雑談を含めて話す時間を取っていた。「困ったらこの人に聞いて」と、面倒見のいい先輩を最初に紹介する。たったそれだけ。特別な研修制度があるわけではありません。でも「聞ける相手が最初からいる」という一点で、定着率が明らかに違った。同じ時給、同じ仕事内容で、この差が出るのです。

辞めさせないために、まず何を変えるか

実は、早期離職を止めるのに大がかりな制度は要りません。順番を間違えなければ、小さな仕組みで十分効きます。よくあるのが、いきなり評価制度や研修プログラムから手をつけて、途中で疲れてしまうパターンです。

入社後三週間を「設計」する

最初の三週間だけ、やることを決めておきます。初日は誰が案内するか。分からないことを聞く相手は誰か。一週間後に一度、雑談でいいから様子を聞く時間を取るか。これを紙一枚に書くだけで、現場の受け入れは変わります。人は「放置された」と感じた瞬間に離れます。逆に「気にかけてもらえている」と感じれば、多少きつい仕事でも踏ん張れる。制度ではなく、最初の三週間の密度の問題です。ケースによりますが、この三週間を整えるだけで一か月以内の離職がかなり減る会社を、いくつも見てきました。

先ほどの建設会社は、次に採った一人に対して、初日に先輩を一人つけました。「分からなかったら、まずこの人に聞け」。それだけ。一週間目に社長が五分だけ「どう?慣れた?」と声をかけた。特別なことは何もしていません。でも、その新人は今も残っています。社長は後になって「あんなに簡単なことで変わるとは思わなかった」と、少し照れくさそうに言っていました。手をかけたのではなく、順番を整えただけ。そこに気づけたのが大きかった。

辞めた人ではなく、残った人に聞く

離職の原因を探るとき、辞めた本人に聞いても本音はなかなか出ません。「一身上の都合」で終わります。むしろ聞くべきは、続いている社員です。「入ったばかりの頃、何が一番不安だった?」「どうしていたら楽だった?」。ここに、次の新人が辞めない答えが詰まっています。ある会社では、この聞き取りから「最初の一週間はペアで動かす」というルールが生まれ、それ以降の早期離職が目に見えて減りました。原因は現場の中にあって、社長室からは見えにくいだけなのです。

判断基準:採用を増やすか、定着を整えるか

人手が足りないとき、多くの社長は「もっと採ろう」と考えます。でも、その前に一つ確認してほしい。直近で辞めた人は、入社何か月で辞めたか。もし半年以内が多いなら、それは採用不足ではなく定着の問題です。穴の空いたバケツに水を足しても、水位は上がりません。まず穴をふさぐ。判断の目安はこうです。入社一年以上の社員が安定して残っているなら、採用を増やす。一年未満で辞める人が続いているなら、採用は止めて定着の仕組みを先に作る。順番を逆にすると、求人費だけが出ていきます。日本政策金融公庫の調査でも、中小企業の経営課題として人材の確保・定着は常に上位に挙がっています。多くの会社が同じ壁に当たっているということです。

もう一つ、見落とされがちな数字があります。一人採用するのにかかる求人費と、辞めた後にまた採り直す費用。ここに、教えた時間や、残った社員が新人対応で削られた工数を足すと、早期離職の本当のコストは求人広告の金額の何倍にもなります。表に出ないから軽く見えるだけで、実際には利益をじわじわ削っている。だからこそ、辞めない仕組みを一つ作るほうが、次の一人を採るより先なのです。最初は半信半疑だった社長も、この計算を一緒に紙に書き出すと、たいてい「たしかに、採る前にやることがあるな」と表情が変わります。

よくある質問

Q1. 何度採っても辞めるのは、うちの見る目が悪いからですか?

多くはそうではありません。半年以内の離職が続くなら、原因は見極めより入社後の受け入れ側にあります。まず入社後三週間を見直すのが先です。

Q2. 早期離職はどのくらいの期間で判断すればいいですか?

入社一年未満での離職が続くなら定着の問題、一年以上残る人が多いなら採用の量の問題と分けて考えます。この線引きが判断の起点になります。

Q3. 受け入れ体制を整えるのに費用はかかりますか?

大きな費用は不要です。初日の案内役と、聞ける相手を決め、一週間後に様子を聞く。この三点を紙一枚に書くところから始められます。

Q4. 辞めた理由を本人に聞いても本音が出ません。

本人からは出にくいのが普通です。続いている社員に「入りたての頃の不安」を聞くほうが、次の離職を防ぐ答えが見つかります。

Q5. 岐阜だと採用自体が難しいのですが?

地方で母集団が限られるからこそ、採った人を定着させる意味が大きくなります。同じ求人費でも、定着率が高い会社は実質の採用コストが下がります。

Q6. 給料を上げないと辞めますか?

給与も要因ですが、早期離職の引き金は「聞ける人がいない」「居場所がない」であることが多いです。まず環境、次に待遇の順で見るのが現実的です。

Q7. 社長が忙しくて新人を見る時間がありません。

社長が直接見る必要はありません。面倒見のいい先輩を一人、受け入れ役に決めるだけで十分です。役割を決めることが仕組みです。

Q8. 定着の相談は税理士にしてもいいのですか?

構いません。人の定着は人件費や採用費という数字に直結します。数字の裏側にある組織の課題として、経営全体の視点から一緒に整理できます。

最後に整理しておきたいこと

  • 採ってもすぐ辞めるのは、採用より入社後の受け入れに原因があることが多い
  • 最初の三週間、聞ける相手と気にかける時間を用意できるかが分岐点
  • 辞めた本人ではなく、残った社員に「入りたての不安」を聞く
  • 一年未満の離職が続くなら、採用を増やす前に定着の仕組みを先に作る
  • 「合わない人だった」で片づけると、同じ離職が繰り返される

人が続かないと、社長は自分を責めたり、辞めた人を責めたりしがちです。でも、責める相手を探しても定着はしません。まずは紙一枚、入社後三週間にやることを書き出してみてください。それでも同じことが続くなら、数字と組織の両面から一度、外の目で整理してみるのも一つの手です。一人で抱え込まず、動きながら直していきましょう。

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