承継の税負担が心配な経営者へ|自社株対策は直前より「早期着手」で選択肢が増える

自社株評価を本気で下げたいなら、「亡くなる直前に慌てて対策」ではなく、「少なくとも5〜10年前から、評価方法の選択と資本・資産の整理を組み合わせて動くべき」です。 正直なところ、評価引下げの“裏技”は存在せず、「評価方式(類似業種比準・純資産・配当還元)の理解」と「決算・資本・事業承継税制を踏まえた長期設計」ができるかどうかで、後継者の税負担は大きく変わります。

【この記事のポイント】今日のおさらい:要点3つ

  • 自社株評価は「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」で決まり、同族株主かどうか、会社規模によって適用される方式が変わります。
  • 実は、自社株評価を下げる具体策は、「評価方式の見直し」「純資産の圧縮・整理」「株式の分散・承継タイミングの工夫」「事業承継税制の活用」の4つの組み合わせで考えるのが現実的です。
  • こういう人は今すぐ動くべきです:直近3期の決算書を見て「純資産が積み上がっているな」と感じているのに、自社株評価を試算したこともなく、「事業承継税制」や「類似業種比準価額」の言葉を一度も専門家と一緒に確認していない経営者。

この記事の結論

  • 一言で言うと「自社株評価を下げるには、評価方式の理解+純資産の圧縮+承継スケジュール設計を、5〜10年単位で早めに始めることが決定的に重要」です。
  • 最も重要なのは、「類似業種比準価額」と「純資産価額」の両方で自社株を試算し、どちらがどれだけ高いか、どの要素(配当・利益・純資産)がネックになっているかを把握したうえで、そこに効く対策(退職金・設備投資・不採算資産の整理など)を設計することです。
  • 失敗しないためには、「評価を下げる」ことだけに囚われず、事業承継税制などの税制優遇も比較しつつ、「会社の成長」「後継者の負担」「自分の老後資金」の3つのバランスで判断することです。

通帳残高と純資産の増え方を見て、「自社株 評価 下げる 方法」と検索してしまう夜

決算書の純資産の右上がりグラフに、ため息ではなく数字を書き込みたくなる

決算書の貸借対照表を開いて、純資産の欄を3期分並べる。 1億、1億3,000万、1億6,000万──右肩上がりの数字を見て、「本来なら喜ぶべきなんだろうけど」と心の中でつぶやく。

頭の片隅では、

「この純資産がそのまま自社株評価に乗っかるんだよな」 「子どもに会社を継がせたら、税金を払いきれないんじゃないか」

という不安が静かに居座っている。

そのままパソコンを開き、ブラウザの検索窓に指が伸びる。

「自社株 評価 下げる 方法」 「事業承継 自社株 対策 いつから」

と打ち込んで、記事を何本も開いてしまう。

正直なところ、私も初めて自社株評価の記事を読んだとき、「類似業種比準価額」「純資産価額」「配当還元方式」といった言葉の多さに少し目が滑りました。 よくあるのが、「難しそうだから税理士に任せる」と思いながら、でも税理士にも“自分から具体的な相談を切り出せていない”状態です。

実体験①:承継直前に慌てて相談し、選べる手段がほとんど残っていなかったケース

ある製造業の社長は、70歳を過ぎてから、ようやく事業承継を本気で考え始めました。

社長「実は、もっと前から気になっていたんです。でも、“そのうち考えればいいや”と先延ばしにしていて」

いざ税理士に自社株評価を出してもらうと、

  • 純資産価額方式で評価:1株あたり△△円
  • 総株数を掛けると、会社の評価額は数億円規模

という結果に。 後継者がこの株式を相続・贈与するとなると、相続税・贈与税の額は簡単に数千万円単位になります。

税理士から提案されたのは、

  • 事業承継税制の適用(一定条件のもとで自社株に係る相続税・贈与税の納税猶予・免除が受けられる制度)
  • 役員退職金の支給による純資産の圧縮

でした。

しかし、社長の本音はこうでした。

社長「正直なところ、もっと早く相談していれば、“自社株の評価を下げる対策”も合わせてできたんだろうなと。70を超えてからだと、打てる手が限られるなと感じました」

このケースは、「直前対策」だけでは限界があり、「早期に評価を把握し、数年かけて対策する必要性」を痛感させてくれました。

実体験②:早めに純資産の増え方に気づき、5年前から少しずつ動き出した社長

別のサービス業の社長は、60歳を過ぎたあたりで、自社株評価の試算を税理士と一緒に行いました。

  • 類似業種比準価額方式:1株あたりX円
  • 純資産価額方式:1株あたりX×1.5円

と、純資産価額の方がかなり高い結果に。

社長は、「まだ元気に働くつもりだけど、今のうちに動いておかないと」と感じたと言います。

その後5年間で、次のような対策を少しずつ実行しました。

  1. 不要な遊休不動産の整理・売却
  2. 含み損のある有価証券の処分
  3. 自分の退職金の一部を前倒しで積み立てる計画
  4. 将来的に子会社化・分社化を見据えた事業整理

これにより、純資産価額を圧縮しつつ、事業の収益性は維持。 同時に、事業承継税制の適用条件を満たすための準備(経営計画の策定、雇用確保要件のチェックなど)も進めました。

社長は、「実は、自社株対策は“税金のため”というより、“会社の棚卸し”だと感じるようになった」と話します。 翌朝、決算書を開いたとき、「自分が元気なうちにここまで整理できた」と思えたのが、一番の安心材料になったそうです。

自社株評価を下げる前に押さえるべき「評価方法」と「リスク」の基本

自社株評価の3つの方式と、同族株主・会社規模の影響

事業承継の解説では、自社株の評価方法として次の3つが説明されています。

  1. 類似業種比準価額方式
    • 上場企業の株価をベースに、自社の配当・利益・純資産を比準して算定
    • 中小企業の同族株主の株式評価において、原則的に用いられる方法
  2. 純資産価額方式
    • 「資産の時価 − 負債 = 純資産」をベースに、1株あたりの価額を算定
    • 資産が多く利益も積み上がっている会社は、この方式だと評価額が高くなりやすい
  3. 配当還元方式
    • 配当金を基に評価する方法
    • 一般の少数株主(同族株主以外)が対象で、同族株主には原則使えない

国税庁の通達や解説サイトでは、「同族株主かどうか」「会社規模(大・中・小)」により、どの評価方式を使うかが変わることが示されています。

一般論として、

  • 純資産価額方式は評価が高くなりがち
  • 類似業種比準価額方式の方が低く出るケースも多い

とされています。

正直なところ、「うちの株はどの方式で評価される前提になっているのか」を知らない社長も少なくありません。 まずは、税理士と一緒に「現状だと、どの方式・どの水準になるのか」を試算してもらうことが出発点です。

自社株評価を下げる目的とメリット・デメリット

自社株評価を下げる目的は、「節税」だけではありません。事業承継の解説では、次のようなメリットが挙げられています。

  • 後継者の相続税・贈与税の負担を軽減
  • 後継者が株式取得資金(買い取り・集約費用)を用意しやすくなる
  • 経営権を後継者に集中させやすくなる

一方で、デメリットや注意点もあります。

  • 純資産を圧縮しすぎると、金融機関からの信用にも影響する
  • 意図的な評価引下げが「租税回避」とみなされるリスク
  • 資産・事業の切り離しが、従業員や取引先に与える影響

公的な解説や大手の事業承継記事でも、「自社株評価を下げる手法は、税負担だけでなく経営全体とのバランスで検討すべき」と繰り返し書かれています。

実は、「とにかく株価を下げればいい」という発想だけで突っ走ると、会社そのものの価値や信頼を傷つけかねません。 税理士・金融機関・M&Aや事業承継に強い専門家と一緒に、メリットと副作用を整理するステップが欠かせません。

自社株評価を下げる具体的な手法と「早期着手」の意味

方法①:評価方式・比準要素に効く施策(類似業種比準価額を意識する)

類似業種比準価額方式は、次の3つの要素で計算されます。

  • 1株あたり配当金額
  • 1株あたり利益金額
  • 1株あたり純資産価額

これらを、類似業種(上場企業)の同じ指標と比較し、一定の比準割合をかけて評価額を決める仕組みです。

実務の解説では、

  • 配当を抑える(ただし極端な配当ゼロは慎重に)
  • 利益を一時的に抑え、役員報酬や退職金で社外に出す
  • 純資産を圧縮する(後述の不採算事業・含み損資産の整理など)

といった方法が取り上げられています。

ただし、配当を減らしすぎると、少数株主や家族内のバランスに影響しますし、利益を抑えるために無理な経費計上をするのは本末転倒です。 「類似業種比準価額の比準要素」にどう効くかを理解したうえで、「健全な経営判断の範囲」で調整するのがポイントです。

方法②:純資産価額を圧縮する(不要資産の整理・退職金・設備投資)

純資産価額方式は、「資産(時価)−負債」で決まるため、純資産が少なければ株価評価も下がります。

自社株対策の解説では、純資産圧縮の手法として、次のようなものが紹介されています。

  • 不採算事業の廃止・整理
  • 含み損を抱えた資産(不動産・有価証券等)の売却・減損処理
  • 役員退職金の支払い(退職金は損金算入されるため、利益・純資産を圧縮できる)
  • 収益に貢献する設備投資や不動産取得(資産サイドの組み替え)

ある税理士法人の解説では、「子会社株式の評価を類似業種比準価額で低く抑えることで、本体会社の純資産価額を下げる」といった高度な手法にも触れられています。

ここでも、「評価のためだけの不自然な取引」はNGです。 不採算事業の整理や老朽設備の更新など、「もともとやるべきだったこと」を事業承継のタイミングに合わせて進めるのが、最も後悔の少ないやり方です。

方法③:株主構成・承継スケジュールと税制(事業承継税制を含めて設計する)

自社株対策として、評価引下げとあわせて検討したいのが、「株式の承継スケジュール」と「事業承継税制」の活用です。

事業承継の株価対策に関する記事では、次のようなメリットが挙げられています。

  • 自社株の移転に伴う相続税・贈与税の負担を軽減(納税猶予・免除)
  • 後継者の株式取得資金の負担を軽減
  • 経営権の集中がスムーズになる

一方で、

  • 継続雇用や事業継続など、一定の条件を長期間守る必要がある
  • 猶予された税金が、将来の状況によっては免除されず、支払う必要が出てくる

といったデメリット・リスクもあります。

税理士会や専門サイトの解説でも、「事業承継税制を使うと自社株対策に縛られなくなるが、適用時の株価が相続税全体に影響するため、自社株対策も併用した方が望ましい」とされています。

つまり、「株価を下げる」か「税金を猶予する」かの二者択一ではなく、「株価対策+税制活用+承継スケジュール」をセットで設計するのが現実的な答えです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 自社株評価は、いつ試算すべきですか?

A1. 事業承継を意識し始めた段階(60歳前後など)で一度試算し、その後3〜5年ごとに見直すのが現実的です。 直前になってからだと、打てる手が限られます。

Q2. 評価方式は自分で選べますか?

A2. 完全に自由ではありません。 同族株主かどうか、会社規模などに応じて、通達上の原則に従って評価方式が決まります。 ただし、併用比率の調整などである程度コントロールできる余地もあります。

Q3. 純資産価額と類似業種比準価額、どちらを下げるべきですか?

A3. ケースによりますが、両方で現状評価を試算したうえで、高い方の評価に効く対策を優先するのが基本です。 中小企業では、類似業種比準価額の併用比率を高めることで評価を下げられる場合もあります。

Q4. 役員退職金は、自社株対策として有効ですか?

A4. 適正額の範囲であれば有効です。 退職金は損金算入され、純資産と利益を圧縮できるため、株価評価を下げる効果があります。 ただし、過大な退職金は否認リスクもあるため、専門家と慎重に検討すべきです。

Q5. 事業承継税制を使えば、自社株対策は不要になりますか?

A5. 完全に不要にはなりません。 事業承継税制は税金を猶予・免除する制度ですが、適用株価が相続税全体の計算に影響するため、自社株評価対策も併用した方が望ましいとされています。

Q6. 自社株を後継者に少しずつ贈与するのは有効ですか?

A6. 年間110万円の基礎控除などを活用して、段階的に贈与する手法はよく用いられます。 ただし、評価額が高いままだと、贈与税負担が重くなるため、自社株対策とセットで考える必要があります。

Q7. どこに相談すればいいですか?

A7. 自社株評価と事業承継に詳しい税理士や、公的機関の事業承継相談窓口(中小企業支援機関など)への相談が勧められています。 「普段の申告だけの税理士」ではなく、「事業承継・自社株対策の実務経験があるか」を確認すると安心です。

まとめ

  • 自社株評価を下げる判断は、「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」という評価ルールと、同族株主・会社規模に応じた通達を理解したうえで、どの要素(配当・利益・純資産)がネックになっているかを特定することから始まります。
  • 自社株評価引下げの現実的な手法は、配当・利益・純資産に効く対策(役員退職金、不採算・含み損資産の整理、設備投資など)と、株主構成・承継タイミングの設計、そして事業承継税制の活用を組み合わせることであり、「直前対策」ではなく「5〜10年単位の早期着手」が選べる選択肢を大きく増やします。
  • 迷っているなら、まずは直近3期分の決算書を持って、自社株評価に詳しい専門家に「現状の評価額」と「今からできる対策の選択肢」を一度整理してもらい、そのうえで「どこまで株価を下げるべきか」「どの税制を使うか」を一緒に決めていくのがおすすめです。

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藤垣会計事務所